Die Geschichte von Seelen der Wolken



Die Geschichte von Seelen der Wolken


第十七話   仮面の男出番なし




新歴65年 12月7日 第97管理外世界  海鳴市  強装結界外部   PM7:00



 「スティンガーレイ!」


 S2Uより直射型射撃魔法が発射され、高速の光弾がシャマル目がけて飛来する。


 「また外れか」


 だが、撃ち抜いた騎士は霞となって消え去る、などという良質なものではなく、保有する魔力を開放して魔力爆発を引き起こすという遙かに悪質な代物であった。


 つまり、今回生成された偽りの騎士達は高速で飛行する爆弾も同然、射撃魔法が当たれば即座に爆発し、周囲の空間をジャミングし、本物を区別するためのサーチャーやレーダーの目を眩ませる。


 かといって、封鎖領域の外側に逃げようとするそれらを放置するわけにもいかない、闇の書は間違いなく湖の騎士が持っており、他の三騎よりも彼女を捕えることの方が優先順位が高いのだ。



 【エイミィ、どうだ?】


 【あー、駄目だ、サーチャーやレーダーが妨害されてる。それに、新たに三体出てきたよ】


 【これで、残る武装局員は7人か………】


 シャマルのリンカーコア摘出と闇の書、その恐るべきコンボは強装結界を維持している武装局員達を、湖の騎士のエネルギー源へと変えてしまっていた。


 リンカーコアを蒐集し、それによってダミーを作り出し、姿を眩ます。ダミーが潰され、本物が捕捉されそうになればまたリンカーコアを蒐集し、ダミーを生成、この繰り返しだ。



 【どうする?】


 エイミィの問いは、強装結界をこのまま維持するか、それとも解除するかというものだが、結界の解除は守護騎士を取り逃がすこととほぼ同義である。


 【まだ早い、トール、準備は?】


 【メディカルルーム、手術準備完了、“命の書”と“ミード”の調整も済みました。武装局員全員の定期検診におけるリンカーコアのデータが届いておりますので、即座に手術可能です。仮に20名全員がリンカーコアを蒐集されようとも、三日あれば職場復帰が可能かと】


 リンカーコアの治療は事前の調整がものを言う。なのはの場合は緊急であり、やはり応急手当に近い部分があったが、武装局員は全員が定期健診を行っており、守護騎士に蒐集されるリスクを覚悟した上で任務に当たっている。


 そして、後方の備えが万全であれば、前線もリスクを恐れずに大胆な行動に出られる。このまま時間をおけば蒐集された武装局員の命が危ないのであれば、無念ながら撤退という判断になっていたかもしれないが、治療設備が整っている時の庭園が作戦本部である以上、多少の無理も利く。



 【ユーノが内部から強装結界を補強してくれているから、その間に何とか湖の騎士を捕縛する】


 新たに三体のダミーが作られ、合計15体に達しているが、クロノと武装局員達は既に7体を破壊している。


 つまり、生成速度よりも破壊速度の方が上回っているのであり、クロノが率いている8名を撃破出来ない以上、この天秤は崩れない。クロノが到着し、より高度な連携が取れるようになったことも拍車をかけている。


 【根比べ、だね、腕の見せどころだよ、クロノ君】


 【最善を尽くす】


 【うん、こっちも全力でサポートするよ】



 通信を行っている間にもクロノは全速で飛行し、ダミーをさらに一体捕捉する。近づけば動きからして本物でないことも分かるが、破壊しておかなければ後でどのような不具合が出るか分からない、湖の騎士は策謀に長けた参謀なのだから。


 「スナイプショット!」


 ダミーを破壊し、マルク分隊とラム分隊に指示を出し、湖の騎士に対する包囲網を構築していく。


 ダミーは封鎖領域外部へ逃げようとしているが、リンカーコアの蒐集とダミーの生成を行っている本物はそれほど動けないはず、ダミーの発生地点がほぼ一定の区画に限定されていることもそれを示している。


 そう思わせておいて、脱出を試みるダミーの中に本物が潜んでいる可能性も捨てきれないためダミーは全て叩いているが、それを加えてもなお、アースラの方が数の上で優位に立っており、ダミーの数は減り、包囲の輪は狭まりつつある。


 闇の書を操り、悪辣な策を展開する風の参謀と、部下を率いて彼女を追い詰める黒衣の魔導師。


 派手な砲撃も強力な近接の一撃もない頭脳戦は、徐々に終局へと向かっていく。











同刻  第97管理外世界  海鳴市  強装結界内部




衝突する桜色の魔力光と紫色の魔力光。


 ミッドチルダ式の魔導師と、ベルカの騎士の戦いは激しさを増し、各々の得意とする戦術を展開していく。


 「アクセルシューター!」

 『Accel Shooter.』


 レイジングハートの先端より、12発の光の帯が射出される。それは現状におけるなのはの最大発射数であり、誘導力・威力・貫通力もディバインシューターより格段に上がっており、かつ、相手の攻撃も迎撃可能、中距離戦においては攻防一体の陣となる新型魔法。



 「つおっ!」


 迫りくる誘導弾を、シグナムは炎熱変換された魔力を纏わせた一閃にて弾き飛ばす。カートリッジのロードはされていないが、純粋に彼女の魔力が込められるだけで、レヴァンティンは危険極まりない凶器と化す。


 「―――追って」


 だが、なのはの誘導弾は強く、速い。シグナムの一撃を持ってしめても砕くことが出来ず、弾かれた光弾は魔導師の杖の制御に従い、再びシグナム目がけて飛来する。


 「ふっ」


 四方からは迫りくる光弾を弾くのは難しいと判断した彼女は、上方への離脱を試みる。もしなのはがレイジングハート・エクセリオンを用いた訓練を十分に積んでいれば上方からも誘導弾が殺到してきたであろうが、なのはが生まれ変わったレイジングハートを持つのはこれが初めてであり、いわば試運転なのだ。


 もっとも、カートリッジシステムを搭載したレイジングハート、を扱う訓練は“ミレニアム・パズル”による仮想空間(プレロマ)において行っているため完全に初心者というわけではないが、管制機が語ったように、身体で覚える部分まではフィードバックさせられないため、若干の齟齬が生じている。


 だからであろうか、上方に離脱したシグナムを追う誘導弾の動きはやや直線的なものとなり、シグナムが一度に迎撃する機会を与えてしまった。



 「レヴァンティン!」

 『Sturmwinde. (シュトゥルムヴィンデ)』


 シュベルトフォルムの刀身から衝撃波を打ち出す攻防一体の斬撃。


 シグナムが主に相手の飛び道具を撃ち落とす際に用いる攻撃であり、純粋なミッドチルダ式魔導師であるなのはに対してはかなり有効な手段と言える。


 放たれた衝撃波は12発の誘導弾を砕き、シグナムは休むことなくなのはへと肉薄していく。


 「――――!」


 12発のアクセルシューターは、現状におけるなのはの最大発射数、これが防がれたということは、シグナムはなのはの攻撃を凌ぎながら間合いを詰めることが可能であることを示しており、彼女の侵攻を止めるならばバスター級の破壊力が必要となる。


 しかし、ディバインバスターは発射までに多少時間がかかり、なおかつ誘導性能を持っていない。十分に引きつけた上で放つことが出来れば決め手となるが―――



 「シュランゲバイゼン!」

 『Schlangeform.(シュランゲフォルム)』


 レヴァンティンの第二形態、連結刃がそれをさせない。シュランゲフォルムは威力よりも間合いを制することに主眼が置かれた形態であり、複雑極まりない刃の群れがなのは目がけて飛来する。


 『Axelfin.(アクセルフィン)』


 射撃型であるなのはにとって、間合いを詰められることは致命的。剣士であるシグナムと戦うならばなんとしても距離を取らねばならず、万が一デバイス同士の打ち合いになってしまえば、レイジングハートのフレームが持たない、バルディッシュと異なり、近接を想定されたデバイスではないのだ。


 これがグラーフアイゼンであれば、柄の部分と打ち合うことも可能だが、レヴァンティンは剣であり、刀身全てが刃。一点の破壊力ならばグラーフアイゼンに劣るが、なのはにとってはむしろこちらの方が厄介であった。


 「逃がさん!」

 『Schwertform.(シュベルトフォルム)』


 伸びきった連結刃を一旦戻し、シュベルトフォルムとなったレヴァンティンと共にシグナムは高速で間合いを詰める。


 “近づいて叩き斬る”ことが戦術の基本である以上、シグナムの間合いを詰める技術はヴォルケンリッターの中でも最上である。ヴィータの場合はラケーテンフォルムのロケット加速による強襲が可能なため、シグナム程にはその技術に長けておらず、ザフィーラの基本は“待ち”だ。


 先の戦いにおいて、シグナムは機動力において自分を上回るフェイトに容易く接近し、紫電一閃を決めている。シュワルベフリーゲンなどの誘導弾や遠隔攻撃を持たないシグナムは、まさしく接近戦のエキスパートといえる。


 とはいえ、彼女にも遠距離攻撃がないわけではない。ただしそれはフルドライブ状態での渾身の一撃であり、まともに喰らえばなのはは死ぬ。非殺傷設定というものが存在しない現在のレヴァンティンの最強の一撃は、不殺の誓いを持つシグナムにとって禁じ手に近いものだ。


 「速い!」


 しかし、それがなくともシグナムは強い。攻撃の威力や速度もさることながら、何よりも戦術の組み立てが優れている。これがフェイトであれば一度直接戦っているため対処のしようもあり、現にフェイトはそのつもりで修練を行っており、なのははヴィータとの再戦を期して訓練していたが―――


 「はああ!」

 『Protection Powered.(プロテクション・パワード)』

 「くうっ!」


 シグナムと戦うための訓練が、十分であるとはいえなかった。


 甘いと言えば甘いのであり、なのはがヴィータに再戦を申し込んだところで向こうが応じる保証などなく、むしろ、相手の不利はこちらの有利、なのはがヴィータとの戦いを想定していたならば、それを外す方が戦略としては正当だ。


 だが、ヴォルケンリッターは一流の戦闘者であると同時にベルカの騎士でもある。真正面からぶつかれば拒むことは難しいだろうと、執務官であるクロノやリンディですら想定しており、それは正しい洞察であった。



 <主はやてと鍋のため、時間はかけられん!>


 ただし、ヴォルケンリッターにそれ以上に大切な事情があることまでは、いくら優秀なアースラ首脳陣とはいえ読み取ることは出来なかった。管制機に至っては論外であり、機械である彼にとってそのような条理に合わない“人間の心”こそが最大の鬼門、45年をかけて積み上げた人格モデルを以てしても、人間を図るにはなおも足りない。


 『Schlangeform.(シュランゲフォルム)』


 主の意図を察し、炎の魔剣レヴァンティンが形状を変える。


 鉄鎚の騎士ヴィータと鉄の伯爵グラーフアイゼンのラケーテンハンマーによってバリアが砕かれ、本体すら破損させられたレイジングハート。


 その轍を踏まないよう、カートリッジによって強化された魔力を用いて障壁を展開し、さらに、激突点に魔力を集中できるよう改良を加えたプロテクション・パワード。これならば、ラケーテンフォルムの一撃にも当たり負けることはない。


 そしてそれは、レヴァンティンにも適用されるものであり、先の衝突においては紫電一閃を防ぐことに成功しているが、あくまで正面からの攻撃に限っての話。障壁の死角となっている後方へ回り込むように連結刃が展開し、なのはを後ろから襲う。



 「あぐっ!」

 『Master!』


 シュベルトフォルムからの強力な一閃から、連結刃への繋ぎ。鉄鎚の騎士のラケーテンフォルムからはあり得ない連携であり、ヴィータに対抗するために編み出された防御では、シグナムには抗しきれない。



 そして同様のことは、他二つの戦場においても言えた。




■■■




 「おらあああああああ!!」


 「くうっ!」


 鉄鎚の騎士ヴィータと、橙色の使い魔アルフ、この二人の戦いはほぼ一方的といえる様相を見せている。


 ヴィータの戦術は単純明快、加速と一点突破に特化したラケーテンフォルムによってアルフに肉薄し、ひたすら攻撃するというものだ。


 これは、ヴィータの速度が相手を上回っているからこそ可能な戦術であり、相手がなのはやフェイトであればこの戦術はとりようがない。なのははヴィータとほぼ互角の飛行速度を誇り、ヴィータが突進すれば誘導弾が背後から襲ってくることになるだろうし、彼女の防御はカートリッジを得てさらに堅くなっている。


また、フェイトが相手ならば正面から突撃するだけでは捉えられない、純粋な速度においてフェイトはヴィータを凌駕しており、さらには射撃魔法もなのは程の誘導性はないが放ってくる。


 だがしかし、アルフの戦闘スタイルはザフィーラと似通っている部分が多く、基本的に彼女はフェイトのサポートとして動いている。そのため、防御力やバインド、近接格闘など、フェイトが担えない部分は得意となるが、フェイトが得意とする分野では少々弱い。


 つまるところ、ヴィータはフェイトとはそれほど相性が良くはないが、それだけに使い魔であるアルフとは相性が良いということだ。使い魔が主の能力を補完するような特性を備える以上、これは当然の理とも言える。


 なお、同じ理屈で、なのはに対して相性の良いシグナムは、ユーノのような搦め手を得意とするタイプを苦手としている。彼女の技は全てが直接攻撃系で占められているため、直接攻撃系魔法を持たないユーノとは真逆であり、シグナムの剣が空回りすることになりかねず、相性が良いとは言えない。


 「ラケーテン―――」


 「やば!」


 そして、ヴィータを有利に傾けている最大の要因が、グラーフアイゼンの一点集中した破壊力だ。アルフはシールドやバリアの形成を得意としており、広域殲滅魔法などに対しても強固な障壁によってフェイトを守り切ることを可能とする。


 しかし、彼女はミッドチルダ式の使い手であり、古代ベルカ式との戦闘経験が少ない、というかこれまで皆無であった。リニスの教育内容にもアームドデバイスで襲い来る古代ベルカ式への対処法という項目はなく、破壊力が一点に凝縮されたラケーテンハンマーの一撃はアルフにとって鬼門と言えた。


 とはいえ、彼女とて無策ではなく、最初に実現させたようにグラーフアイゼンの柄に拳を叩き込むことで何とか紙一重で回避していくが―――



 「せえい!」


 「ぐっ!」



 紙一重である以上は、かすることもあって然り。回を増すごとにヴィータの攻撃は鋭くなっていき、直撃こそ避けているが、シールドでかろうじて逸らす場面も増えてきた。


 <こいつも、学習してる>


 アースラ組がヴォルケンリッターを研究してきたように、彼女らもまたアースラ組を研究している。それこそが、魔導犯罪者がロストロギアの暴走体や、魔法生物などに比べ厄介とされる由縁であり、つまるところ、人間の最大の長所とは身体能力ではなく、学習能力ということだ。


 次元世界には数えきれないほどの生物がおり、中には人間を遙かに超える力と知能を持った生物もいる。真竜などは最たる例だが、そのような彼らと比較した場合においても、人間以上に学習能力に特化した生命体は確認されていないのだ。


 「同じ防御で凌ぎきれるほど、ベルカの騎士は甘くねえ!」


 「だったら、同じ攻撃ばかりであたしを倒せると思わないことだね!」



 故にこそ、時空管理局にとって最大の脅威とは、ロストロギアでも魔法生物でもなく、人間に他ならない。広域次元犯罪者などはほんの数年を置いただけで、現行の管理局システムの穴を突き、違法行為を当然の如く行っていく。ロストロギアや魔法生物は対処法が確立すればそれまでだが、人間の犯罪者は違う。


 闇の書が破壊不可能とされる最大の原因は、必ず人間が使うからに他ならない。そこに人間の悪意というものが混ざっていなければ、闇の書は今頃永久封印されていたことだろう。


 そして、闇の書の一部であるヴォルケンリッターもまた、管理局にとっては厄介極まりなく、一度は捕縛することに成功した手段も、二度目はあり得ない。最初の戦いにおいてヴィータをバインドに捕えることに成功したアルフも、この戦いでは一度も成功していない。


 <このままじゃジリ貧だ、何とかしないと>


 局面を打開する手法を探りつつ、アルフは防衛戦を続ける。というより、攻勢に出ることをヴィータが許さない。


 こちらの戦いもまた、守護騎士の有利に進みつつあった。







■■■


 『Plasma Lancer.』

 閃光の戦斧の音声が響き渡り、黒いバリアジャケットを纏った少女の周囲に、8個のスフィアが形成される。


 「プラズマランサー、ファイア!」


 それは、バルディッシュ・アサルトによって強化されたフォトンランサーの発展型の直射型射撃魔法。


フォトンランサーと比べ発射された弾自体に強度があり、目標に命中しなかった場合も「ターン」のキーワード(遠隔操作)で方向転換し、再度目標へ向けて攻撃が可能となっている。


さらに、クロノのスティンガーブレイドと同様、発射時及び再発射時に、弾体の一つ一つを環状魔法陣が取り巻くことで加速発射を可能としている。フェイトのプラズマランサーにファランクスシフトの特性を加えたものが、クロノのスティンガーブレイド・エクスキューションシフトと呼べるだろう。


 だがしかし―――


 「はあああ!」


 弾の速さも、命中しなかった場合に方向転換するという特性も、“受け止められた”場合は意味をなさない。


 盾の守護獣、ザフィーラの障壁はまさしく鉄壁であり、フェイトの射撃魔法では貫くことは敵わない。それを成そうとするならば、プラズマスマッシャーにような砲撃魔法が必要となる、いや、果たしてそれでも貫けるかどうか。


 「バルディッシュ!」

 『Haken Form.』


 それならばとハーケンフォルムによって高速機動からの強襲を仕掛けるフェイトだが―――



 「………」


 鉄壁の構え


 ザフィーラはあくまで防御の構えを崩さず、迎撃ではなく守勢に徹する。


 フェイトの攻撃は重さよりも切れ味や速さを重視したものがほとんどである。電気変換の資質を有しているため当たれば行動不能に陥らせるほどのダメージを与えることが出来るが、積み重ねによって盾を砕く、ということには向いていない。


 故に、バルディッシュの一撃は彼の防御を貫けない、さらに、それだけではなく―――


 「裂鋼牙!」


 敵の攻撃を防ぎ、最も技の出が早い直進型の魔法攻撃、裂鋼牙で瞬時に反撃する後の先こそ、ザフィーラの基本スタイルである。無論、連携は多種多様に存在するが、この組み合わせが基本であることは間違いない。


 「せい!」


 持ち前の速度を利してザフィーラの攻撃を躱し、即座に迎撃を試みるフェイトだが、クロスレンジにおいてはバルディッシュを振るうフェイトよりもザフィーラの方が早い。


 「裂鋼襲牙!」


 「つああ!」


 とはいえ、フェイトの速度は尋常ではなく、ザフィーラも十全に魔力を込めた拳を放てているわけではない。培われた戦闘経験によって彼女の動きを予測し、そこに拳を中てているだけ、という表現が的確だろう。


 しかし、フェイトの防御も厚いものではないため、それだけでも十分な効果が見込める。さらに、高速機動を行うフェイトの魔力消費は、空中で静止して防御と反撃に徹しているザフィーラのそれよりも遙かに大きい。



 <でも、速度ならわたしが上、振り切って、なのはやアルフを助けに行ける>


 フェイトも自分と敵の相性が悪いことを悟っており、一旦引いて合流すべきではないかと考える。


 アルフならば、ザフィーラと互角の格闘戦を演じることが出来るし、砲撃に特化したなのはならば、純粋な威力でザフィーラの防御を貫けるかもしれない。


 三人の中で、最もザフィーラと相性が悪いのは高速機動からの近接攻撃と、射撃、砲撃を組みわせたヒットアンドアウェイを旨とする自分だ、ならば―――



 【なのは、アルフ、この組み合わせはまずい、一旦合流して相手を替えないと】


 【でも、シグナムさんはそう簡単には振り切れそうにないよ、連結刃が、どこまでも追ってくる】


 【こっちもきつい、残念だけど、速度はこの鉄鎚野郎の方が上だ】



 フェイトと同様の感想はなのはとアルフもまた有していたが、間合いを詰めて襲い来るシグナムと、ジェット噴射の加速によって突っ込んでくるヴィータを振り切って合流するのは容易ではない。



 【わたしから行くよ、彼の速度よりわたしの方がずっと速いから、離脱だけなら簡単に出来る】


 ヴォルケンリッターの布陣における唯一の隙、ザフィーラは確かにフェイトにとって倒し難い相手ではあるが、逃げにくい相手ではない。むしろ、離脱を目的とするならば、三人の中で最もやりやすい相手だ。


 【距離的にはなのはの方が近いから、まずはそっちに行く】


 彼女達もまた、ヴォルケンリッターと戦うにあたって戦術というものの重要性を実感し、時間が許す限りクロノから教えを受けていた。


 自分の目の前の相手だけに拘らず、全体を見ながら戦うことが出来るようになりつつあるのは、僅か数日という時間を鑑みれば、目覚ましい進歩であると言えるだろう。



 だがしかし、敵の戦闘思考レベルに合わせて戦略を決定するのが一流の指揮官というもの。



 烈火の将シグナムと、参謀である湖の騎士シャマルは、彼女達がその程度の判断を出来るようになったであろうことを見越した上で、その上を行く戦略を用意していたのである。










新歴65年 12月7日 第97管理外世界  海鳴市  強装結界外部  ビル屋上 PM7:07





 「捜索指定ロストロギアの所持、及び使用の疑いで、貴女を逮捕します」


 「………」



 結界外部で行われていた虚像と実像が織り交ざった頭脳戦は、綱渡りのような駆け引きの末に、とあるビルの屋上において決着を見ていた。


 その間にさらに一名の強装結界担当の武装局員がリンカーコアを引き抜かれたが、その犠牲を無駄にすることなく、クロノと小隊長、8名の武装局員達はシャマルを包囲することに成功していた。


 湖の騎士シャマルが空間魔法に長けていることは最早周知の事実であり、武装局員8名が転移を封じるための結界を構築し、その内部でクロノとシャマルが対峙、小隊長はさらに外側で封鎖領域の維持に当たっている。


 「抵抗しなければ、弁護の機会が貴女にはある。同意するならば、武装の解除を」



 “旅の鏡”による逃走は封じられ、闇の書を使うだけの余裕もない。クロノはシャマルの数メートル先におり、こちら目がけてS2Uを向けている。


 他の三騎ならばこの状況からでも正面突破を図れるが、後衛であるシャマルには不可能な芸当、そも、彼女が直接アースラの主戦力と対峙する状況になっている時点でほとんど詰みなのだ。


 それを誰よりも知っているからか、彼女の周囲には観念したような、もしくは悲観的とも言うべき空気が漂っている。


 「ええ…………そうします」


 そして、投降の意を示すように手を上げ、指に収まっていたデバイス、クラールヴィントの一つを取り外す。



 <一つ、足りない?>


 だが、歴戦の執務官であるクロノはその違和感に即座に気がついた。彼はレイジングハート、バルディッシュ、S2U、そしてトールが記録していた前回の戦いの映像を何度も見返しており、湖の騎士の指に収まっているデバイスが四つであることを確認している。これは、クラールヴィントと同調したトールからも裏が取れている。


 後衛である彼女が単独で動いていたというのに、そのデバイスが一つ足りない、それが意味するものとは一体何か。


 さらに―――


 「どうぞ」


 コインでも投げるかの様な自然さで、シャマルは指から外したクラールヴィントを、山なりにクロノ目がけて放り投げる。


 ほぼ反射的に、一瞬クラールヴィントを目で追ってしまったクロノ、しかし即座にシャマルに視線を戻した瞬間、“それ”はやってきた。


 







新歴65年 12月7日 第97管理外世界  海鳴市  強装結界内部  ビル屋上 PM7:06




 クロノがシャマルを包囲し、投降を促す瞬間より数えて僅かに1分ほど前。


 強装結界内部においても、戦局に大きな変化が表れていた。



 「ハーケンセイバー!」


 バルディッシュ・アサルトのハーケンフォームの刃を飛ばし、飛翔しながら高速回転して円形状に変化する魔力刃による、高い切断力と自動誘導の性能を持つ魔法。


 この局面でフェイトがこの魔法を選んだのは、威力よりも自動誘導という特性を考慮したためであり、通常は自動で敵に向かうハーケンセイバーと高速で飛翔するフェイトが同時に襲いかかるが、攻撃ではなく離脱のための時間稼ぎとしても利用できる。


 状況に合わせた的確な魔法運用という点で、フェイトは間違いなく成長している。流石にまだ守護騎士と同格とまではいかないが、その成長速度は末恐ろしいものを感じさせる。



 「はああああ!」


 「―――! テスタロッサか!」


 己の許す限りの全力で飛翔し、フェイトはなのはと対峙しているシグナムに対して切りかかる。流石に不意を突かれてか、シグナムも辛うじて受けたまま、一旦後退していく。


 「アクセルシューター!」


 さらに、なのはも誘導弾をシグナムではなく、アルフに突撃しているヴィータ目がけて放つ。なのはの戦場からはかなり距離を隔てた場所で戦っているアルフとヴィータだが、遠距離攻撃こそ高町なのはの十八番である。



 「またかよ!」


 「残念だったね!」


 ヴィータにとっては、ユーノに対して放った渾身の一撃を、なのはのディバインシューターによって妨害されたという苦い経験があり、図らずしもそれと似たような状況が作り出されていた。


 そして、フェイト、なのは、アルフは合流を果たし、相性が悪い敵と1対1×3という危機的状況は何とか回避される。



 【シャマル、こちらは行けるぞ】


 だがしかし、その瞬間をこそ、烈火の将は待っていた。


 彼女らの目的はこの三人を倒すことでも、蒐集を行うことでもなく、鍋を作って待っている主とその友人の下へ可能な限り早く帰還すること。


 ならば―――



 【こっちも、後30秒も持たないわ、武装局員の結界で転送系の魔法が封じられてるし、例の黒い子がこっちに来てる。流石に優秀ね】


 【そうか、ならばちょうどいい、タイミングはいつだ?】


 【私がクラールヴィントを外して、上に投げた瞬間、貴女が持っている指輪とは対になっているから、接続しているレヴァンティンが合わせてくれるわ】


 【了解だ、的が決まっているならば、我が一矢が外れることはあり得ん】


 【お願いします、リーダー】



 剣の騎士、シグナムが魂、炎の魔剣レヴァンティン。


 刃と連結刃に続く、もう一つの姿にして、最大の速度と破壊力を誇るフルドライブ状態。


 すなわち―――



 『Bogenform!』


 ボーゲンフォルム、シグナムの戦術において攻撃の核となる剣と、防御の核となる鞘、その二つが結合し、一つの弓となる。



 「え―――!」

 「な―――!」

 「に―――!」


 その姿に、アースラ陣営の三人は一瞬言葉を失う、剣の騎士と呼ばれるシグナムが弓を持つなど、流石に予想できることではなく、これまでの闇の書事件のデータにおいては、この形態は一度も存在しなかったのである。




『Grenzpunkt freilassen! (フルドライブ・スタート)』


 カートリッジが吐き出され、レヴァンティンがその全力を開放、すなわち、主のリンカーコアを100%稼働させるフルドライブモード。


 非殺傷設定が存在しないデバイスにおいて、フルドライブを機能させることは、己の力の全てを敵を殺すために費やすことを意味する。シグナムもヴィータも、相手を殺さないように意識の一部を力の制御に費やしているが、フルドライブ状態ではそのような加減は効かなくなる。


 それ故に、八神はやてが主である守護騎士にとって、フルドライブは人間相手に使えるものではない。ただし、放つ相手が人間ではないならば、その限りではないのだ。



 「我が一矢、いかなる壁をも貫き通さん!」


 壁、まさしくシグナムが狙いを定めているのはそう表現できる。


 武装局員が形成し、本来は12人で外側から固めていたが、6人がリンカーコア摘出の餌食となったため、ユーノ・スクライアが内部から補強しているヴォルケンリッターの逃走を封じるための強装結界。


 守護騎士の中で、それの破壊を可能とするのは二人。剣の騎士と鉄鎚の騎士のフルドライブ状態における渾身の一撃に他ならない。


 烈火の将シグナムが、顕現させた矢に火炎を凝縮させ、必滅の一撃を解き放つ瞬間を計る。


 そして、ほんの数秒の時間を置いて―――



 【今よ!】


 湖の騎士が、“的”を放り投げ、その時が訪れる。



 「駆けよ! 隼!」

 『Sturmfalken!(シュトゥルムファルケン)』


 結界・バリア破壊の能力を持つ、灼熱の炎を纏いし矢は音速の壁を越えて飛翔し、強装結界へと命中、それを突きぬけ、さらにその先へ。


 無論、その先に存在する“的”とは―――







同刻  海鳴市  強装結界外部  ビル屋上 



 「! 総員! この場から離れろ!」


 その奇襲を彼が察知できたのは、湖の騎士の指輪が少なかったことに違和感を覚え、その理由を考えていたからか、それとも、積み重ねられた戦闘経験によるものか。


 いずれにせよ、クロノ・ハラオウンは強装結界を突き抜けたことで音速を超える領域に比べれば減速し、威力もある程度落ちている灼熱の矢が飛来することを感知し、武装局員へ退避命令を出すことに成功していた。



 「クラールヴィント、“旅の鏡”を」

 『Jawohl.』


 しかし、シャマルが残り二つの指輪によって自分を転送するための“旅の鏡”を顕現することまでは止めようがなかった。“旅の鏡”を展開したところで、武装局員の張った転送封じの結界がある限り、離脱は不可能であるが。



 「「 うわあああああああああ!!! 」」


 ちょうど、矢が飛来した方向にいた武装局員の悲鳴が響き渡ると同時に、結界へ着弾した矢が爆発し、爆炎と衝撃波が発生。結界破壊の能力を持った矢は、武装局員の転送封じの結界を消滅させ―――



 「さよなら」


 数秒に満たない僅かの隙に、湖の騎士シャマルは戦場から離脱を果たしていた。




 「―――逃がしたか」


 爆炎が張れる頃には、シャマルが“的”として放り投げたクラールヴィントの一つも周囲にはなく、闇の書もまた当然のことながら、湖の騎士と共に姿を消していた。











同刻  海鳴市  強装結界内部   




 「まずい、補強を!」


 シグナムが放ったシュトゥルムファルケンによって穴を穿たれた強装結界は、罅の入った盾も同然であったがまだ辛うじて機能を留めていた。


 シュトゥルムファルケンの爆発そのものはシャマルの転送魔法を封じていた結界に対して用いられたため、強装結界は一部分が貫通するだけで済んでいた、なのはのスターライトブレイカーのように、“結界の完全破壊”という特性を有しているわけではないのだ。


 そして、穿たれた穴をユーノは即座に補強する。Aランクという彼の魔力を考えればどういう理屈で可能とするのか疑いたくなるが、ギャレットが言ったように、総合ならばAランクであっても、結界魔導師としてならばAA、下手をするとAAAランクに相当するのかもしれない。


 だがしかし、そんな彼を嘲笑うように、ヴォルケンリッターの第二の槍が放たれる。



 「アイゼン!」

 『Gigantform!(ギガントフォルム)』


 鉄鎚の騎士ヴィータと、鉄の伯爵グラーフアイゼン。


 この二人の砕けぬものは存在せず、守護騎士四人において最も物理破壊を得意とする一番槍こそ、彼女らである。


 グラーフアイゼンのフルドライブ状態、ギガントフォルムが顕現し、途方もなく巨大な鉄鎚へと姿を変える。こちらもシグナムと同じく、相手が人間ではないからこそ可能な伝家の宝刀である。



 「レイジングハート!」


 「バルディッシュ!」
 

 だがしかし、その一撃をただ傍観している程、なのはとフェイトは愚鈍ではない。ディバインシューターとフォトンランサー、彼女らの射撃魔法の中で最も発動が早いそれらを瞬時に放とうとし―――



 「縛れ――――鋼の軛!」


 彼女らにとっては完全に死角であった下方より伸びる、藍白色の杭を思わせる魔力の波動がその動きを止めていた。


 それは、先の戦いでアルフに放たれた収束型ではなく、四方から囲むように拘束の軛で対象を突き刺して動きを止める、鋼の軛の本来の使用法。


 「フェイト! なのは!」


 だが唯一、その攻撃に気付けた者がいた。以前ザフィーラと戦い、鋼の軛によって痛手を負わされたアルフは、ザフィーラが遠距離攻撃を有していることを身をもって知っており、ヴィータが巨大な鉄鎚を掲げる光景を前にしても、彼への注意を怠ることはなかった。


 三人が固まっていたことは、全員が鋼の軛の標的となることを意味しているが、同時に、守りやすくもある。障壁によって主を守ることはアルフが最も得意とするところであり、さらに守りはそれだけではなく―――



 「まずい、防御を―――」



 彼女らより遙か遠くにいるユーノ・スクライア、ヴィータの巨大な鉄鎚をその魔力を目撃し、もはや強装結界が破られるのは避けられないと悟った彼は瞬時に目標を切り替え、なのは、フェイト、アルフの三人を守るための障壁を展開させた。


 その判断は見事の一言に尽きるが、それは同時にヴィータを止められる者は最早誰もいないことを意味しており―――



 「ギガントシュラーク!」



 横薙ぎに放たれた鉄の伯爵グラーフアイゼン最大の一撃が、ヴォルケンリッターの逃走を封じていた強装結界を完全に破壊していた。












新歴65年 12月7日  次元空間  時の庭園  中央制御室  日本時間 PM7:20



 『ふむ、やはり闇の書の守護騎士にはアルゴリズムだけではない理由があるようですね』


 鉄鎚の騎士が強装結界を砕き、三騎は飛行魔法によって逃走。途中まではエイミィ・リミエッタが指揮するサーチャーとレーダーが追っていたが、再び“偽りの騎士”が現れ、判別がつかなくなった段階で追跡を中止した。


 間違いなく、先に離脱した湖の騎士が今回蒐集したページの余りを用いて顕現させたものに他ならず、使うべき時には躊躇なく使うその思いきりの良さは流石にベルカの騎士と言うべきか。


 『此度の遭遇戦、結果だけを見るならばアースラの敗北とも取れますが、得たものも多い』


 6人の武装局員が蒐集されたが、その分のページは今日の戦いでほぼ消費し、プラスマイナスは0。


 守護騎士の実力や切り札、行動理念についても数多くのデータが取ることに成功、長期的に見るならば実に有意義な成果をもたらしてくれた。


 『まだ大数式のパラメータが揃ったとは言い難いですが、それでも徐々に集まりつつある。それに、“彼女ら”もやはり動いていたようですね、偶然ではありましたが、彼女らを捕捉できたのは僥倖と言える。まあ、役目はなかったみたいですが』


 管制機は知る、老提督が何を覚悟し、どのような終焉を求めているかを。


 それ故に―――




 「………出番なかった」




 海鳴市に存在するビルの陰にて、虚しそうに呟く仮面の男の姿を、“時空管理局の誰もが知らない時の庭園独自のサーチャー”が、確かに捉えていた。


 管制機が操るサーチャーの中には“12月の第97管理外管理外世界”にいても違和感がない形態を持つ者達がいる。


 フェイト・テスタロッサが地球で暮らすことを決めた時、私立聖祥大学付属小学校に通うと決めたその時から。


 時の庭園の管制機だけが存在を知るサーチャーが、海鳴市のフェイトに関わる重要地点に中心に、多数設置されていたのである。


 余談ではあるが、高町家において、なのはがお風呂に入ることを怖がっている事実を確認したサーチャーも、それらの一つであったりする。


 そして、時の庭園が闇の書事件対策本部となっている現在においては、管理局が第97管理外世界に置いているサーチャーやレーダーもまた、彼の管制下にある。


 フェイト・テスタロッサは管制機トールがそれらを悪用しないためのある種の“保険”でもあり、彼女がハラオウン家にいる以上、トールが管理局に敵対することはあり得ない。


 だがしかし、管理局のサーチャーを悪用することと、それにばれないように時の庭園独自のサーチャーを設置することはイコールではない。


 可能な限りフェイトを見守るためにトールが放ったサーチャーは、思わぬ成果を上げていた。


 そして、それらのサーチャーの役割はあくまで“フェイトを見守る”ためのもの。


 それ故、八神はやての所在地を知りながらも、彼はこれまで八神家にサーチャーを飛ばすことはなかった。


 彼が八神家そのものの調査を開始するのは、月村すずかを通してフェイト・テスタロッサが八神はやてを知り、彼女と友達になった時より後のことである。



 ただし、既にフェイト・テスタロッサの友人である月村すずかとアリサ・バニングス、その二名は別である。



守護騎士と管理局の戦闘に巻き込まれることを万が一にも避けるため、守護騎士を武装局員が補足した時より、管制機は彼女らの携帯電話のGPS機能によって現在地を特定し、サーチャーを派遣していた。(専用の変換機によって、地球のなのはが本局にいるユーノにメールを飛ばせたりもするので、逆も然り)


 そして、月村すずかの安全確認のために派遣されていたサーチャーは―――



 「たっだいまー、はやて!」


 「ただいま戻りました」


 「ただいまです、はやてちゃん」


 「………」


 「お帰り皆、お鍋の準備できとるよ、グッドタイミングや」


 「お邪魔してます、シグナムさん、シャマルさん、ヴィータちゃん、ザフィーラ」




 守護騎士の行動理念の根源を、偶然ながら、探り当てることに成功していた。



 闇の書の守護騎士、ヴォルケンリッターは――――



 主と客人が待つ鍋に、間に合ったのである。










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