Die Geschichte von Seelen der Wolken



Die Geschichte von Seelen der Wolken


第二十話   今は遠き、夜天の光




新歴65年 12月8日  第97管理外世界 日本 海鳴市 八神家  AM8:00



 それはきっと、いつもと同じ、いつも通りの朝。


 夕食にわたしの友達であるすずかちゃんがやってきて、皆で鍋を囲んで楽しい夕餉となり、一緒にお風呂に入ったり、楽しく過ごした翌日。


 ただ、いつもと違うのは、わたしが目を覚ましたのは八神家ではなく、月村家やったこと。


 まあ、色々とあって、気が付いたらすずかちゃんを迎えに来たリムジンに自分も乗り込んでいたというのはびっくりな話やけど、家族は皆笑って送り出してくれた。


 色んなお話をしたし、なのはちゃんというすずかちゃんの友達にメールを送ったりもした、いつか会って友達になりたいと思う。


 ただ―――


 【ご友人の家にお泊りになるならば、今夜はほぼ制限なく動ける。戦いは夕方あったばかりだ、流石に管理局の網も緩んでいるだろう】


 【じゃあ、すぐ行こう。出来る限り蒐集して、さっさと終わらせねーと】


 【だが、シャマルは念のため10時までは待機しておいた方がいいだろう、電話がかかってこないとも限らん】


 【そうね、そうしましょう】



 わたしの大切な家族が、とても辛い旅に出ていることは、この時のわたしは知らなくて。



 「ふぅー、落ち着いたあ」


 「お疲れ様でした、主はやて」


 リムジンで送ってもらったため、家に帰ってきた時に少し気疲れしていたわたしを出迎えてくれた烈火の将の声も、少しだけ疲れが含まれていたことに気付かなかった。



 「あれ、ヴィータとザフィーラは?」


 「一緒に、町内会の集まりに行っています。夕方には戻ると」


 「そっか」


 「ヴィータちゃん、町内会のお爺ちゃんお婆ちゃんの人気者ですから」


 「あはははは」



 そう、それは、何でもない日常。


 だけど、少しだけ普通の日常とは言えない風景もあって。



 「闇の書が」


 「どうしたの? 急に現れたりして」


 「起動はしていませんね、待機状態のままです」



 八神家の最後の一人、というか、一冊? の、闇の書が気付けばわたしの傍に浮いていた。



 「うーん、一晩家を空けたのは久しぶりやから、寂しかったんかな?」


 闇の書はただ浮いているだけ、なのに、なぜか寂しそうな、悲しそうな印象を受けるのは、なぜだろう?


 「おいで、闇の書」


 でも、言葉をかけると、嬉しそうに寄ってきてくれて。


 「ふふふ、ええ子や、よしよし」


 撫でてあげると、不思議とわたしも温かい気分になれる。



 「なんだか、前にも増してはやてちゃんに懐いちゃってますね」


 「他のマスターの時には、こんなんなかった?」


 「ええ、我々の記憶の限りでは」



 闇の書は、様々な魔導師の魔力を記録して、ページとして蒐集することで力を発揮する、蒐集蓄積型の巨大ストレージ。


 蒐集方法がちょい荒っぽいので、わたしは許可を出していない。


 だからこの子は、今は白紙のただの本。まあ、浮いたり飛んだり、すり寄ってきたりはするけど、ただそれだけ。



 「あははは、やあ、もう、いたずらしたらあかんって、あはははは♪」


 「なんだか、もうすっかりペット扱いね」


 「だが、あれも満更ではなさそうだ」



 そして、闇の書の守護者であり、所有者の臣下として働く騎士が、この子達。


 烈火の将シグナムと、風の癒し手シャマル、あとは、現在お出かけしてる、紅の鉄騎ヴィータと蒼き狼ザフィーラ。


 「あふ」


 「あら、睡眠不足ですか?」


 「うーん、昨日は遅くまで話し込んでもうたから、ちょいと足りてないみたいや、すずかちゃん家の布団、ごっつふかふかでちょい緊張したし」


 「では、お休みになられますか?」


 「そやね、ご飯時に眠ってまって、皆がお腹空かせたらあかんし、少し休ませてもらうな」


 「では、ベッドまでお連れしましょう、よいしょっ」


 「ふふ、ありがとうな」



 でも、最近は…急に……眠く…なることが……増えてきたかな?


 ちょっと前……までは……こんな…こと………なかった………思うん……やけど―――





■■■




 「はやてちゃん、もう寝ちゃった?」


 「シャマル、毛布を」


 「うん」


 シャマルが毛布を手に取り、シグナムへ渡す。


 【シャマル、主は本当にただの寝不足か? 闇の書の影響が何か出ているのでは】


 【今調べたけど、何もないみたい、昨日までと、何も変わらないわ】


 【何も?】


 【ええ、闇の書が、はやてちゃんの身体と、リンカーコアを侵食してるのも、今はまだ、足の麻痺以外には健康が保たれているのも】


 【その侵食が、少しずつ進んでいるのも、か】



 その時、はやての上に浮いていた魔導の書が、気遣うように鈍く輝く。



 【ああ、闇の書、気にするな、主は大丈夫だ】


 【平気だから、心配しないで】


 無意識のうちに、二人は闇の書を気にかけている。その中にいる最後の一人こそ、現状に最も心を痛めていることを知るように。


 「お休みの邪魔をしてはいけないわ、出ましょう」


 「ああ」


 「闇の書も」


 その言葉に応えるように再び鈍く輝き、古いロストロギアは騎士達の後についていく。






 「実は一つ、気になることがある」


 「えっ」


 「以前、主はやてが私のことを、“烈火の将”と呼んだことがあった。ヴォルケンリッターの烈火の将ともあろう者が、そう落ち込んではいけないと」


 「でも、その二つ名って」


 「私達の間で、わざわざ使う名ではない。私を将と呼ぶのは、闇の書の管制人格だけだ」


 「まさか……」





■■■




 「う、ううん……」


 【主、我が主】


 「んん、なんや〜、ご飯、まだやで〜」


 【昨夜は失礼しました。騎士達が用意したセキュリティの範囲外においででしたので、私の備蓄魔力を使用して、探知防壁を展開しておりました。睡眠のお邪魔だったかもしれません】


 「んーん、そんなことないよぉ、なんや、守られてる感じがしてたぁ」


 【この家の中は安全です。烈火の将と、風の癒し手もおりますし、私からの精神アクセスを、一時解除します。予定の時間まで、ゆっくりお休みください】


 「ん、お休みなあ」


 【はい――――我が主】




■■■




 「まさか、管制人格が起動しているの、だって、あの子の起動に必要なページはまだ蒐集し終えてないし、はやてちゃんの許可だって」


 「無論、実態具現化まではいっていないだろう。だが、少なくとも人格の起動は済んでいる、そして、主はやてとの精神アクセスも行っている」


 「うん、それ自体は別に悪いことじゃないと思うんだけど」



 その時―――



 【シグナム、シャマル、ザフィーラだ】


 ヴィータとは別の世界へ蒐集に出かけていた、盾の守護獣から連絡が入る。



 「あ、ザフィーラ、ちょうどいいところに、今どこ?」


 【かなり遠くだ、管理局の網は無いようだが、その分獲物も少ない。集めたコアは僅かだがとりあえず蒐集は出来た、闇の書を受け取りたい】


 「うん、今、闇の書に行ってもらうけど……」


 【どうかしたのか】


 「闇の書の管制人格が、主はやてと精神アクセスを行っているようだ」


 【……そうか】


 「対策を考えていたの、貴方の意見は?」


 【管制人格は、我々より上位に配置されたプログラムだ、現状において、我等は彼女の行動に直接干渉できん】


 「正規起動するまでは、対話も出来ないしな」


 【彼女も我等も、想いは同じはずだ、アクセスだけならば害はないだろう。そして、意識の底でも出逢えたならば、我等の主は、彼女のことも労わってくださるはずだ】


 守護騎士と管制人格もまた、深い絆で結ばれている。


 あまりにも長い夜の間に、その絆の根源は失われてしまったが、それでも、絆はなくならない。



 「現状維持が、ザフィーラの結論?」


 【余分な混乱を防ぐため、ヴィータには伏せておくことも提案する】


 「そうね、私も同意見、というか、それしか出来ないんだけど」


 「ふむ―――闇の書が転移準備を始めた、じきにそちらに着く、ザフィーラ、引き続きよろしく頼む」


 【心得ている】



 闇の書は単体であっても、守護騎士の下へ転移する機能を備えており、この転移だけは管理局には決して捉えることは出来ない。


 なぜならそれは、放浪の賢者ラルカスが夜天の魔導書のために組んだ術式であり、夜天の守護騎士達も、管制人格たる彼女も理解できない、ミッドチルダ式でもベルカ式でもない、古のドルイドの技で編まれたものだから。


 闇の書が備える転生機能もまた、それと同じ術式で構築されており、ミッドチルダの魔導師やベルカの魔術師がいかなる術で封じようとしても、それは儚い夢。


 闇の書の転移を止めるならば、転生プログラムそのものを破壊するより他はない。どんな術式であっても、巨大ストレージに刻まれたものである以上、プログラムそのものならば破壊は可能である。


 ただしそのためには、強固どころではない防衛プログラムを突破する必要があり、無理に行おうとすればやはり転生してしまうため、これも不可能に近い。


 故にこそ、闇の書は破壊不能のロストロギアと呼ばれる。



 「何も出来ないのは、心苦しくて不安ね」


 「そうだな、だが何もできないならば、せめて良い方に考えよう。あの子とのアクセスで、主の病の進行が少しでも弱まってくれることがあれば」


 「うん……………うん、そう考えましょう!」


 「そういえば、お前が闇の書に施した仕掛けの方はまだ大丈夫か」


 「ああ、偽装フィールドのこと、まだ大丈夫よ。私達四人以外が開いた時はページは白紙のままに見えるし、普通に調べたくらいじゃ、魔力反応も出ない。闇の書が完成するまで、はやてちゃんが気付くことはないわ」


 「主はやてに真実を偽るのは、心苦しいがな」


 「言い出したのは私だし、やったのも私、貴女が気に病むことじゃないわ」



 そこに、電話音が鳴り響き、シャマルが応対に出る。


 電話の主は海鳴大学病院の石田先生であり、明日の定期検診が11時であることの確認と、予約が必要な機器を使用するため、時間を間違えないようお願いします、という内容であった。



 「はい、それではまた明日」


 「石田先生か?」


 「うん、明日の予約の確認だって、明日は、私が付き添うから」


 「出来ればヴィータも連れて行ってやってくれ、少し休ませないといけない」



 それはすなわち、シグナムは蒐集に出ることを意味している。今日出かけているザフィーラもまた同様だろう。



 「了解、それじゃあ、お洗濯を済ませちゃうわね、貴女も出来る限り休んでおいて」


 「ああ」



 リビングから出ていくシャマルを見送り、シグナムは一人佇む。



 <考えることは、多いようで少ない、今はただ、闇の書の完成を目指すのみ>


 右手に、ミニチュアの剣型アクセサリの状態で待機している己の魂を見つめながら。


 <シャマルを追い詰めた、黒衣の指揮官、強装結界をほぼ一人で維持して見せた、結界魔導師、そして、まだ拙い部分もあったが、戦術と連携を進歩させてきた三人、誰が相手であろうとも、戦って切り抜けるまでだ>


 烈火の将は、静かに覚悟を新たにしていた。









新歴65年 12月9日  第97管理外世界  海鳴市  海鳴大学病院  AM11:00



 「それじゃあ、検査室ね、案内するわ」


 「はい」


 ほぼ時刻通りに定期健診を終え、さらに検査のために移動する。車椅子を押しているのはシャマルであり、ヴィータはその隣を歩いている、腰には、お気に入りののろいウサギをくっつけながら。


 【はぁ〜、微妙に憂鬱や】


 【そうなの?】


 普通に歩きながらでも、会話が出来るのが念話の便利な点である。


 【この検査退屈なんよ、じーと、寝転んでないとあかんねんけど、眠ってもうて、寝返りとかうったらあかんし】


 【そ、それは大変だ……】


 生来、じっとしていることが苦手なヴィータにとっては想像するだけで拷問であった。


 だがしかし、敵を待ち伏せする時、蒐集の際に獲物を狩るために息を潜める時、鉄槌の騎士ヴィータは呼吸すらほとんど止めた状態で静止し続ける。


 “鷹の眼の狩人”には及ばないまでも、気配を殺すこともまた騎士の持つ技量の一つ、特に、主を守る近衛騎士はその技能が求められ、夜天の守護騎士とて例外ではない。



 【まあ、じっとしてるのは大変ですが、頑張って受けてください。はやてちゃんの身体が、良くなるためですから】


 【そうやね】
 「あ、ヴィータは下で待っててええよ、知り合いのお爺ちゃんやお婆ちゃんがおるかもしれんし」


 「うん、はやて、頑張ってね」


 念話と同時に、普通の言葉でも話すはやて、この切り替えも半年で随分慣れていた。




■■■



 <うーん、相変わらず退屈や、眠ったらあかんと思うほど、眠なるなあ>



 そこは既に現実と夢の狭間。


 身動きしないでただじっとしているはやての身体は眠っている時とほぼ同じようなものであり、その境界が徐々に曖昧になっていく。


 そして―――



 <あ、またこの夢や、最近良く見る、不思議な、夢>


 起きている時はほとんど思い出せないが、夢に落ちると不思議に前にも似たようなことがあったことを思い出す。


 そのような夢を、はやては聞いたことがなかったが、魔法の中にはそんなものもあるのかな、と、ややぼうっとした頭で考えていた。


 そして、白い霧のようなものが徐々に晴れ、自分の目の前の光景が輪郭を帯びていく。



 そこには―――



 「ヴィータ、手加減はしないぞ」

 「んなもんしたら、顔面を粉砕してやるっての」

 「いい答えだ」

 「はっ、甘く見てると痛い目に合うぜ」


 <ヴィータ? それに、向かいにおる黒髪の男の子は、誰やろ?>



 「おおお!」

 「せえやっ!」


 <わわ、真剣と鉄鎚で打ち合っとる。剣道の先生もびっくりや>


 シグナムが剣を振るうところははやても見たことはあるが、ヴィータが戦うところは見たことはない。


 だが―――


 「ふっ!」

 「甘えっ!」


 <なんや――――とっても、楽しそうや>


 二人の打ち合いは素人目にもかなり危険であろうことは分かる、下手をすれば命に関わり、殺し合いの一歩手前といえるだろう。だがしかし、そこから憎悪や敵意といった負の感情は感じられない。


 <危険極まりないはずなのに、なんかこう―――仲の良い兄妹がじゃれあってるような、そんな感じやね>


 やがて勝負がつき、二人の少年少女は先生から論評を受ける。



 「お疲れ様だ、ヴィータ。なかなか惜しかったぞ」

 「うっせーシグナム、負けは負けだよ」

 「それに、リュッセもな、半年ほど留守にしていた間に、紫電一閃をあそこまでものにするとは」

 「ありがとうございます、騎士シグナム」



 <シグナムとヴィータは、いつもこんな感じやね。格好は普段とちゃうけど、よく似合ってるし、なんかこう、先生みたいな感じがする。剣道場の非常勤講師は、けっこう天職かもしれんなあ>



 「お疲れ様、二人とも」

 「ありがとな、シャマル」

 「ありがとうございます、騎士シャマル」

 「どういたしまして、癒しと補助が本領だもの、貴方達の健康管理も私の役目なんだから」



 <あ、シャマルや、こうしてると、部活の子達と保健室の先生みたい。まあ、服だけは中世ヨーロッパっぽいけど、よう似合っとる>



 「それはいいんだけどさ、これ、もうちょいましな味になんねえの?」

 「あら、口に合わないかしら、健康にいいだけじゃなくて、体力や魔力の回復を促進する効果もあるのに」

 「まずい、ってわけじゃあないんだけど、なんか微妙で」

 「あまりわがままを言うなよ、ヴィータ、先輩達に笑われるぞ」

 「お前、よく平然と飲めるなあ」

 「心を決めれば、どんな毒だって飲めるさ」



 <あ、あかんで君、それは禁句や……>



 「へえ―――――――そう、私の特製ドリンクは、毒物扱いだったのね、リュッセ。傷ついちゃったなあ、私」

 「い、いえ、これはただの例えで………」

 「リュッセー、男なんだから言い訳は見苦しいぞー、二言はねえだろー」

 「ちょっと、向こうでお話があるんだけど、いいかしら?」

 「……はい」



 <ご愁傷さまや……>





 時が―――進む





 「でも、兄貴もしっかり教導役をやってんだなあ」

 「こら、白の国でお前達を訓練しているのは一体誰だと思っているんだ?」



 <草原? いるのは、ヴィータと―――ザフィーラ?>


 しかし、はやては違和感を覚える。


 <雰囲気はザフィーラによう似とるけど、髪がヴィータと同じで赤いし、肌の色もちゃう、それに何より、ヴィータにお兄さんって呼ばれとる。ザフィーラって、ヴィータのお兄さんやったんか?>


 「さーて、誰だっけか、アイゼン、お前は分かるか?」

 『Nein.(いいえ)』

 「アイゼン、主人を裏切るな」  「へっへー、アイゼンはあたしの方が主人になってほしいってさ」

 『Nein.(いいえ)』

 「っておい!」

 「ふふ、そうか、残念だったなヴィータ、アイゼンの主となるにはまだ修練不足のようだ―――――さあ、出来たぞ」



 <あれは―――>


 「わあっ、相変わらず器用だな、兄貴」

 「少々遅れてしまったが、誕生祝いということにしておいてくれないか」



 <ザフィーラがヴィータに作ってあげてた冠と、同じや……>



 「愛する妹に贈るプレゼントが草で編んだ冠、ってのはどうなんだ?」

 「すまんな、あいにくと手先と反比例するように心が不器用でね、心を込めた贈り物に金銭をかけるというのが、どうしてもしっくりこないんだ」

 「まあ、兄貴らしいけどさ………少しは姫様のためにも、その心遣いを発揮してやれよ」

 「ああ、善処するさ」

 「まったく……」



 <姫様って、誰やろ? 見た感じ、お兄さんの彼女さんかな、ヴィータとしてはちょい複雑そうやね>



 「それともう一つ、こちらはフィオナ姫からだ」

 「姫様から?」

 「ああ、渡すなら俺の贈り物を渡す時と一緒にしてくれと言付かった」



 <え?>


 「うさぎ………でもちょっと不器用だな」

 「姫様の手縫いの品だよ、騎士シャマルに習いつつ初めて縫ったものらしい。外見の悪さは大目に見てくれ、とのことだ」

 「別に………外見は気にしねーよ」



 <ヴィータの、お気に入りの………>





 時が―――進む





 「レヴァンティン!」0

 『Schlangeform.(シュランゲフォルム)』

 「縛れ、鋼の軛!」

 「………」

 「風よ………黒く淀みし土地を、浄化せしめん」



 <古い遺跡? 皆、黒い何かと戦っとる……人間やない、あれは――――なんや?>


 そこは、遙か古代の亡霊が残る死の遺跡にして、人の世界から遠く離れた地下世界。


 しかし、それに挑む騎士達はまさしく光、押し寄せる亡霊も異形もものともせず、夜天の騎士達は地下へと進んでいく。



 「シャマル、結界を」

 「了解。妙なる響き、癒しの風となれ。交差せし陣のそのうちに、鋼の守りを与えたまえ………」


 <奇麗な光……>


 「それじゃ、しばらく休みましょう。この中にいれば体力と魔力が回復されていくから」


 <どんなにシグナム達が凄くても、ずっと動きっぱなしは無理やもんね、でも………ザフィーラが二人いる>


 はやての目の前では、癒しの陣の内側で休む三人の騎士と一頭の賢狼が存在している。


 そのうち二人は、はやての良く知る二人と同じであった。格好は甲冑であったけど、無骨と華麗の両方を備えたその甲冑は、彼女らに実によく似合っているとはやては思う、自分がデザインした騎士服がちょっと霞んで見えるほどに。


 大きな狼もまた、はやてはよく知っている、彼女の知る蒼い狼そのままの姿だ。ただ、ヴィータが兄と呼んだ人間形態のザフィーラによく似た男性と彼が一緒にいる姿に、彼女は違和感を覚えた。




 「ペンダルシュラーク!」

 『Verhaften Sie Verhutung gegen Bose.(捕縛結界)』

 「シャマル、こちらの準備が完了するまでは持たせろ!」

 『Ich fragte!(頼みました!)』



 騎士達はさらに下へと進んでいく、立ちはだかった強大な怪物も、彼女らの進撃を阻めはしない。



 「熱線を撃てない貴方なんて、その程度の存在よ。こちらから攻撃を仕掛けないなら、大した脅威じゃないの」

 『Wirklich.(如何にも)』

 「レヴァンティン、炎熱変換機能を全開にしろ」

 『Jawohl!』

 「切り裂いてもそれぞれが独自に動き、再び融合する水の蛇。ならば、まとめて焼き尽くすまでだ」

 『Mein Herr, der es verstand.(心得ました、我が主)』

 「剣閃烈火!」

 『Explosion!』

 「火竜一閃!!」



 <――――凄い、あのおっきい蛇が一撃や>


 巨大な怪物を一撃の下に消し飛ばすその姿は、まさにお伽話に登場する英雄そのもの。



 「縛れ!鋼の軛!」

 『Explosion!』

 「さあ、行くぞアイゼン!」

 『Gigantform!(ギガントフォルム)』

 「逆巻く風よ―――」

 「ギガントシュラーク!!」

 『Explosion!』



 <まるで――――竜を対峙してお姫様を助ける、物語の騎士様みたい>






 時が―――進む





 「シュランゲバイゼン!」

 『Explosion.』

 「レヴァンティン」

 『Jawohl.』

 「はあっ!」

 『Ich verhaftete Sie!(捉えました!)』

 「流石だ、烈火の将。私の固有技能(インヒューレントスキル)、“幻惑の鏡面”を容易く見破るとは」

 「貴様が、“蟲毒の主”アルザングか」

 「ほう、彼の誉れ高き烈火の将に覚えていてもらえたとは、嬉しい限りだ」

 「紫電一閃!」

 「グアサング!」

 「レヴァンティン! 撃ち砕け!」

 『Explosion!』



 白の国を、闇が覆い



 「くっそ、光翼斬!」

 「アスカロン」

 『Panzerschild.(パンツアーシルト)』

 「終わりだ! 雷刃滅殺極光斬!」

 「アスカロン、大技が来るぞ。準備は出来ているな」

 『Es wird vervollstandigt.(完了しています)』



 騎士達と若木達が



 「シュワルベフリーゲン!」

 「ブラストファイア」

 「らああああああ!!」

 「パイロブラスト」



 命を懸けて戦い



 『Eine grose Menge kommt!(大群、来ます!)』

 「鋼の軛!」

 『Es ist ziemlich 1300.(およそ、1300)』

 「十分の一程度は、超えてくれたか」

 『Durch Aufmerksamkeit bin ich wieder anders als vor einer Weile.(注意を、先程とはまた違います)』

 「ここは―――通さぬ!」



 散りゆく者達が



 「騎士の誇りを………嘗めるな!」

 「アスカロン! カートリッジロード!」

 『Explosion!』

 「システム―――――“アクエリアス”、顕現!」

 『全開放!』



 「グラーフアイゼン、カートリッジロード」

 『Explosion!』

 「ラケーテン――――!」

 『Raketenform.(ラケーテンフォルム)』

 「ハンマァァァーーーーーーーーーーー!!!」



 「アスカロン………行くぞ」

 『Jawohl.』

 「フルドライブ―――――モード、“ゲオルギウス”!!」

 『Grenzpunkt freilassen! (フルドライブ・スタート)』



 「盾の騎士ローセスが魂、鉄の伯爵グラーフアイゼンを、舐めるな!!」

 『我に―――――砕けぬものはなし!』

 「ぶち抜けえええええええええええ!!」

 『Jawohl!(了解)』



 最後の輝きを見せ



 「ギガントシュラーク!」

 『Explosion!(エクスプロズィオーン!)』

 「鉄鎚の騎士ヴィータと、鉄の伯爵グラーフアイゼン! ここから先は、一歩たりとも進ませねえ!!」



 後を継ぎし者達が



 「縛れ―――――――鋼の軛!」

 「盾の守護獣――――ザフィーラ!! 我が誇りにかけて、ここは通さん!!!」



 夜天の誓いを、守っていく




 そして、長い、永い時が流れ――――




 『『『『『『『『『『『『『『『 オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォ!!!! 』』』』』』』』』』』』』』』



 時代が変わり、人が変わり、夜天の騎士たちもまた、深き闇へと沈んでいく。



 <これは―――また違う戦場、さっきの世界やない、騎士達がたくさんおるけど、時代も違う>


 なぜ自分はその光景を違う世界、違う時代と分かる? なぜ彼らが騎士であることが理解できる?


 そのような疑問は頭に浮かばず、はやてはその光景が示す現実を、確かに捉えていた。



 【伝達! 伝達! 城門は破られました! 首魁と思しき女達が、将軍と交戦中! 防御の陣は、壊滅状態!】


 城の内部にて、通信用の端末を持った女が、前線の状況を伝えている。



 『ぐわああああああああああああああああああああぁぁ!!』


 『温いな、手にした剣が泣くぞ』


 <シグナム! なんや――――そのごつくて歪んだ甲冑姿は、あの奇麗で、騎士の象徴そのものだった甲冑は、どこにいったんや………>



 その光景に、はやては心を痛める。


 騎士としての輝きが微塵もない、黒く汚れ、歪んだ甲冑、あまりにも変わり果てたその姿の痛ましさに。



 『はあっ、はあっ』


 『約束のものを頂こう』


 『な、が、ああああ! き、貴様、何者……』


 『覚えてもらう理由はない、貴様はただ―――――闇の書の糧となれ!』


 『ぎゅ、ぶああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!』


 騎士の胸からリンカーコアが飛び出し、既に瀕死であった騎士は生命力を失い、息絶える。



 <闇の書! シグナムあかん! そんなんしたらあかん! それじゃまるで、シグナム達の国を襲っていた、あの異形の騎士達やないか!>


 融合騎“エノク”を埋め込まれ、騎士としての誇りも何もない、暴力装置となり果てたヘルヘイムの異形の騎士。


 環状山脈を越え、上空より飛来し、白の国の若木達や賢狼、そして、烈火の将によって討ち取られていった闇の軍勢、今や、彼女がそれらと同じものへとなり果てていた。



 【将軍、倒されました! 救援を! 至急救援を! あ、が!】


 通信用の端末に必死に叫んでいた女の首に、細く伸びる紐が絡まり、その身体を宙に吊り上げる。


 『どうぞ、お静かに』


 <シャマル! シャマルも、甲冑が………黒く、闇に染まっとる>


 それは、はやてが知るシャマルとはあまりにもかけ離れた冷たい顔、そして、先程見た、命を懸けて異形の怪物に立ち向かい、この世にあってはならない亡者達を浄化していった清純なる湖の騎士の面影はない。


 『私達は、貴女の命にも、このお城にも何の興味もありません。いただきたいのは……』


 『あ、ぐ、ああああああ……』


 女の胸からも、輝く結晶が引き抜かれ―――


 『貴女達の魔力の源、リンカーコアだけ』


 『ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!』



 その身体が、地に落ちる。リンカーコアを丸ごと引き抜かれることは、魔力のみを蒐集されることとはわけが違う、臓器を直接体外へ抉り出されるようなもの。


 魔力の結晶であり、半物質でもあるため、すぐに戻されれば命に別状はないが、抉り取られたまま放置されればどうなるかなど考えるまでもない。



 <シャマル………どうして、どうしてや、お伽話に出てくる、騎士様みたいやったのに>



 『城を守る一軍と、その将とてこの程度か…………ベルカの騎士も地に堕ちた』


 『そう言わないの』


 『これも、時の流れだ』


 <ザフィーラも………でも、一番変わってしまったのは………貴方達や>



 時は既に、夜天の騎士達が生きた中世ベルカの時代より500年近く後。初代の聖王が築きし“列王の鎖”も既に緩み、列強の王達は私利私欲のために動き、権力闘争に明け暮れる時代。


 中世ベルカの時代、騎士達の黄金期に生きた彼女らにとって、今の騎士の腐敗は目に余る。これではもはや、貴い存在とは口が裂けても言えぬ、とはいえ、この身も既に同じようなものであるが。


 ベルカの時代が完全に終わるまではなおも200年の時を有するが、それは、無意味なる延命でもあった。末期においては、終わらない戦乱、灰色に覆われた空、川のように流れる血があるだけの暗黒時代とされるが、この時代はいわば灰色時代。


 戦火が広がれば、それを止めようとする英雄もまた現れる。覇王イングヴァルドなどはその筆頭であり、はやてが生きる時代から300年程前のベルカ末期においては、質量兵器で武装した共和制を掲げる者達が世界を立て直そうと奮起した時代であり、古代ベルカの気風を受け継ぐ聖王家などの最後の王達も、滅亡前の輝きを見せていた。


 そうして訪れた共和制による平和の時代も長くは続かず、50年ほどで陰がさし始めることとなるが、それでも、暗黒の時代の後には治の季節がやってきた。しかし、この時代にはそれすらない。



 『近頃はベルカでも戦争は稀だもの、もう騎士の時代ではないのかもね』


 騎士が、武力ではなく、財力と権力を頼みとした時代。それ故に武力による戦は稀であり、流れる血は確かに少ないのだろう。


 だがそこに、輝きはなかった。あらゆる物事は停滞しており、文化は衰え、新たな音楽や詩が作られることは稀、人々は平和と苦難の中間のようなぬるま湯の中で、ただ生きていた。戦争がない代わりに人身売買は盛んに行われ、全ては金で取り引きされていた。


 とはいえ、理不尽を最終的に解決するのは暴力しかあり得ないため、戦争は起こる。また、夜盗などの類も多く、楽土とは間違っても言えはしない、だがしかし、金や財産がある程度奪われることはあっても命が奪われることも稀であり、地獄とも言い切れない。


 奪う者達は、捕りつくすことはせず、山菜も半数を残しておけばすぐに殖えるように、民達からも捕り過ぎることはなかった。それを良心的と呼べるかどうかは疑問であるが、決して固有の武力を抱えた金持ちは襲わない以上、義賊とも呼べない、むしろ、奪った金品の何割かは貴族や騎士に献上していた。


 それはまさしく、灰色の時代。野心家たちの火は消えることもないが燃え盛ることもなく、ベルカの地に覇を唱えようと考えるものはいない。中には地獄に近いくらい酷い有様の国もあり、中には平和が保たれている国もある、が、どちらの国も外へ打って出ることはなく、奇妙な切り分けがなされていた。


 そしてそれ故に、最果ての地で嗤う道化にとっては何の興味もなく、異形の知識が最も浸透しなかった時代でもあるのだろう。


 道化にとって、アルハザードの技術が浸透する程の価値がない時代であったから。



 『これではコアの蒐集も心苦しい、弱者を蹂躙して奪うのは、どうも性に合わん』


 『だが、此度の主が我らに望むのもまた、ページの蒐集のみだ』


 『効率一番、早く蒐集しないと、また怒られるわ』


 『そうだな、ヴィータは?』



 <そうや、ヴィータは―――>


 守護騎士の中で一番小さい、はやてが妹のように可愛がっている子。


 そして、夜天の騎士の中で最も若く、守護の星の意志を引き継いだ、誇り高き鉄鎚の騎士。


 しかし、彼女もまた―――



 『でえええええええええい!!』


 少女の一撃が振り下ろされた地点は爆発し、クレーターの如き光景が展開する。その少女が纏う甲冑もまた、かつての輝きはない、昇る紅の明星であったその姿は、まるで死に絶えた錆の惑星のように煤けている。


 『ぎゃああああ!』


 『ば、爆撃! なんだ、なんだ今の攻撃は!』


 『ひ、ひいいい、腕が、腕があああああああああああああ!!』


 倒れ伏し、消し飛んだ腕を抱えるように転げまわる騎士、いや、ただの人間を塵のように見下ろしながら、少女は心底ウザそうに告げる。


 『うっとおしい、ああうっとおしい! 戦場で悲鳴を上げるくらいなら! 初めっから武器なんて持つんじゃねえ!!』


 <ヴィータ―――あかん、その人達は、ヴィータのお兄さんみたいな覚悟を持った立派な騎士とは違うんや、死ぬのが怖い、ただの人間なんや>



 だがしかし、頭部目がけて振り下ろされた鉄槌は、横合いから伸びた剣によって止められていた。



 『シグナム………なにすんだよ!』


 『熱くなるなといつも言っているだろう、蒐集対象を潰してどうする』


 『ちっ、うぜえんだよ、こいつら。覚悟もねえくせに戦場にしゃしゃり出やがって、ヘルヘイムの異形の方が数段ましだ』


 『魔力の消費も避けるべきだ、十分に休息がとれるわけではないのだぞ』


 『うっせえっつってんだ!』


 『いいから、さっさと蒐集して戻りましょう――――主様のところに』


 『はっ、主様ねえ』


 その口調から、彼女が主を微塵も敬っていないことが誰であろうと理解できた。





 <みんな………どうして>


 騎士達の変わり果てた姿に、今代の主が涙する。


 心優しき主の下で、騎士としてではなく、家族として幸せに過ごす今の彼ら。


その姿とは多少違ったけれども、最初に見た夜天の騎士達は、貴き精神を備え、輝きに満ち、人々が理想とする騎士の具現であったのに。


 <戦いばかりだったかもしれんけど、笑い合っていた…………前を向いて、仲間と一緒に、幸せそうやったのに………>


 だからそれが、あまりにも悲しい。


 今は幸せでも、過去は辛かったということは、あってほしいことではないが、それでも、今の自分に出来ることはある。


 辛い過去を癒せるように、前を向いて歩けるように、自分が、あの子達を幸せにしてあげようと、強くそう思える。


 だが―――



 <なんでや――――どうして、あの輝かしい光が、闇に堕ちてしまったんや>



 それはもう、彼女にはどうにも出来ない出来事。


 今の彼女達を幸せにしても、その事実は変わらない。過去の傷のさらに前、確かに存在したはずの誇りを取り戻すことは、平和な世界に生きる優しい少女には、決して出来はしない。


 なぜなら、今の彼女達は、彼女を闇から遠ざけるために、闇の全てを背負おうとしているから。



 <誰か、教えて―――>


 「驚きました、こんな場所まで、ご自分で入ってこられたのですか」


 「え……」


 はやてが気付くと、目の前の光景とは別の質感を持った銀髪の綺麗な女性が、静かに佇んでいた。


 「え、あ、ああ、あなたは……」


 「現在の覚醒状態で、ここまで深いアクセスは危険です。安全区域までお送りしますので、御戻りください」


 「待って、ちょお待って!………わたし、貴女のこと………知ってる」


 以前にも、夢の中で会ったことがある。


 だが、それだけではない―――


 「はい、貴女が生まれてすぐの頃から、私は貴女の傍にいましたから」


 「やっぱり、闇の書―――ううん、フィオナ姫?」


 「フィオナ? ……………申し訳ありません、それは一体、誰のことでありましょう」


 「そ、か…………ううん、ごめんな、わたしの勘違いかもしれん」


 そもそも、自分が見た光景の中に、フィオナ姫自身は出てこなかった。ローセスという男性が、言葉に出しただけ。


 でも、確かにはやては彼女こそがフィオナ姫ではないかと感じたのである。


 あの誇り高き夜天の騎士達が、命に代えても守り通すと誓った女性、今目の前にいる人は、まさしくそのような雰囲気を持っている。


 きっと、この人のためなら、はやてと共にある今の騎士達も、命を懸けて戦うだろうと確信出来るから。



 「私は、本魔導書、闇の書の管制プログラムです」


 「そっか…………うん、それなら今はそれでええよ、いや、そやない、その前に、現状の説明、してもらってもええか?」


 「ええ」



 そして、雪の精霊のように儚い雰囲気を纏った女性が、静かに語る。



 「これは、私と騎士達が共有する記録、闇の書の歴史であり、過去です。今の貴女と共に在る彼女らからはアクセス出来ない領域にあるため、彼女らにとっては“そんなこともあったかもしれない”程度のものでしかありませんが」


 ただ、その方がきっといいと、彼女は語る。


 覚えているには、あまりにも辛い記憶ばかりだから。



 「本来は、蒐集を終え、第二の覚醒を果たし、真の主になった者にのみ閲覧が許可されるのですが、貴女は随分早く、ここにいらしてしまったようです」


 「なあ、過去っちゅうことは、わたしが最初に見たあの光景も?」


 「………申し訳ありません、私が存じているのは、将があの城の将軍を切り伏せたところからでしかないのです。………管制人格である私ですら、把握できていない部分が、増えてしまって」


 「そっか、そんなら、しゃあないな」



 二人の前で、過去の映像が続いていく。



 『ヴォルケンリッター、ただいま帰還しました。本日の戦果は、西の城を一つ』


 『蒐集ページは、54ページ、合計、316ページとなりました』


 将と参謀が、傅いたまま主へと報告を行うが、そこに感情というものはまるで感じられない。


 『遅い、遅いわ』


 『はっ』


 『私は闇の書に選ばれた、絶対たる力を得る権利がある!』


 『はい』


 『神にも等しい闇の書の力! 彼の黒き魔術の王サルバーンが遺した究極の秘宝! これがあれば、私は彼の力をすら凌駕出来る! 早くこの手にもたらすのよ、早く、早く、私を……闇の書の真の主に!』



 「黒き魔術の王サルバーン……それって確か―――」




 その瞬間――――――世界が壊れた




 「な、なんやこれ!」


 「暴走プログラム! 馬鹿な! この段階で発動するはずがありません!」


 突如、風景が乱れる、いや、それどころではない、はやてと彼女がいる空間そのものが捻れ狂い、暴れ回っている。


 今や管制人格ですら制御できない程に増大した“闇の書の闇”、その中枢が、その名前を聞いた瞬間に震えあがり、狂乱したのだ。



 黒き魔術の王サルバーン



 闇の書の闇の中枢にとっては、決して無視できぬ存在にして、恐怖の根源そのもの。


 【怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!!!!!】


 闇の書の根幹に近い部分で、決してその名前を口にしてはならない


 【壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される壊される!!!!!!!】


 彼女達に名を与え、力を与え、知識を与え、そして、恐怖と共に死を与えた暗黒の絶対者


 【助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテ――――――!!!!!!!】


 闇の書の根源にあるのは、ただ一つの念、すなわち、“恐怖”。


 世界が憎くて破壊するのではない、快楽を求めて破壊するのではない、絶望に染まって破壊するのではない。


 闇の書の闇はただ一人の存在を未だに恐れ、恐怖に慄き、怯えながら破壊を続けている。



 そして、恐怖によって乱された映像が、やがて一つの形を成していく。



 「あ、あれは―――」


 「ラルカス師―――」


 自身が発したその言葉を、管制人格は知覚していなかったが、その記録は決して、夜天の魔導書の全てから失われたわけではない。


 果たして、乱れた映像が再び過去へ飛び、嘆きの遺跡の最下部であったはずの空間、今や、二人の大魔導師の魔術の相克が築き上げた決戦場、次元の狭間を略奪するように形成された異空間へと移る。



 『響け! 終焉の笛! ラグナロク!』


 放浪の賢者ラルカスが保有するベルカ式魔法において、最大の攻撃力を誇る直射型砲撃魔法。


 現代の魔導師では、Sランクを超える者であろうとも独力では決して作り出せない膨大な魔力。収束砲ならばリミットブレイクを併用することで辛うじて届くほどの尋常ならざる魔力が、放浪の賢者の杖、シュベルトクロイツへと集っていく。


 彼は本来ドルイド僧であり、精霊の力を借りることを本懐とする。しかし、その他の魔法を使えぬわけではなく、その魔力は中世ベルカに存在するあらゆる魔術師を凌駕し、放たれる貫通破壊型砲撃に対抗できる者などいまい。



 ただ一人を除いて―――



 『轟け! 勝利の号砲よ! エクスカリバー!』


 彼の存在こそ、中世ベルカ、いや、各次元世界に人類が誕生してより最大最強の魔力を持つ黒き魔術の王。


 彼が己の師を超えるために鍛え上げし魔術、叡智、武力、あらゆる技術が、既に全次元世界において片手で足りる程に少なくなった超えるべき高峰、黒き魔術の王が未だ破壊しえぬ存在を撃ち砕くため、極大の魔力が荒れ狂う。


 そしてその魔力の全てが、彼の右手に握られた破壊の杖、ハーケンクロイツへと集っていく。その魔力が解き放たれれば、城はおろか、国が一撃で消滅しようとも不思議はない。



 『人智を超えた鍛錬の果てに、そこまでの力を得たか、かつての我が弟子、黒き魔術の王サルバーンよ!』


 『今こそ貴方を超え、我が覇道の糧としてくれよう、私が師と仰いだ唯一の存在、放浪の賢者ラルカスよ!』




 そして、白の波動と黒の波動、二つの極光が衝突し――――



 次元が―――砕けた







 「はぁ、はぁ」


 「ご、御無事ですか………我が主」


 はやてが気付いた時、彼女は雪のような髪を持った女性に、抱きかかえられていた。


 脅威から守るため、絶対に離さないように両の手で抱き締め、女性は幼い少女の身体全てを破壊の相克から覆っていた。


 「あ、ありがとな……」


 「いいえ、貴女をお守りすることは、我が使命であり、例え使命でなくとも私が成したいと思う、何よりの事柄ですから」


 「………うん」


 その包容力に、はやての心は思わず泣きたくなるほどに揺れ動く。


 はやての記憶にはないけれど、もし、自分の母が生きていたら、この女性のように温かかったのだろうかと。


 半ば呆然としながら、それゆえに混じりけのない心で、はやては思っていた。



 「申し訳ありません主、少々、失礼を」


 「へ、あ…」


 そして、彼女は現在の自分に許される限りの権能を用い、予想外の暴走によって破損したプログラムを修復していく。


 回帰とでも呼ぶべきその機能の対象にははやても含まれており、先程の管制人格である彼女にもよく分からない光景は、二人の記憶から洗い流されていく。


 この邂逅そのものが本来あり得ぬ事柄であり、はやてが目覚めれば欠片しか残らない夢と現実の境界の幕間。


 しかし、先程のあれは、それですらあり得ない完全なエラー、これは、修正されねばならない。




 ■■■




 「この記録は、随分昔のものですね、今からならば、500年近く前になるでしょうか、この時の主は、ベルカのある女性領主でした。良くも悪くもない方だったようですが、強大な力に魅入られ、狂ってしまった」


 「シグナムもシャマルも、随分感じがちゃうな」




 『明朝には出立する。それまで、可能な限り回復しておけ』


 『ヴィータちゃん、寒いから、こっちにいらっしゃい』


 『いらね、一人で寝る』




 「ちょ、ちょお待って、まさかこれが、この子らの部屋か?」


 「この主の時は、そうでしたね」


 「日も当たらん部屋で、じめじめした石の床で、こんなん、まるっきり牢屋やん!」


 「仕方がないのです、守護騎士達は異形の業による者たちでしたから、人目のつくところには」



 彼女は語らない、この時代よりさらに先、戦乱が最も酷い時代、人が死ぬのが当たり前の世界においては、彼女らは将軍のような扱いを受けていたことを。


 生体改造の業、戦闘機人、人造魔導師、そういったものが溢れていた末期のベルカにおいてはヴォルケンリッターも異形どころかまっとうな存在でしかなく、隠し通す必要もなかった、実に皮肉な話である。


 そして、この騎士達を異形と呼ぶならば、先程の破壊をもたらした魔人を、いったい何と称すればよいのか。



 「そんな、そんなのおかしいやん! ことの善し悪しは別にして、主のために一生懸命働いている子らを、こんな寒そうな場所に……ご飯はちゃんと食べさせてもらてたんか、それに皆、普段用の服とかは………あんな薄着で、震えとるやんか!」


 「既に過去の出来事です、あまり心を乱されないように」


 「そやけど、これはあんまりや!」


 「彼女達の過去は、優しい貴女には、刺激が強いようですね、一旦映像を消します」



 彼女の言葉と共に、過去の映像が消えさる。


 ただ、彼女は語らなかった、守護騎士達が本来在るべき姿であれば、震えていることも、疲れた身体で蒐集に出ることもなかったことを。


 湖の騎士シャマルの本領は癒しと補助、彼女が展開する癒しの結界の中で休めば、飢えや石の床はともかく、寒さからは無縁で万全の状態に回復することも出来た筈。そんなことすら、この時の彼女らは忘れてしまっていた。


 そして、この時の騎士達は――――――弱い


 この時代の彼女らが、黒き魔術の王サルバーンや蟲毒の主アルザングに率いられたヘルヘイムの軍勢と戦えば、碌な抵抗も出来ずに殺されることだろう。


 城攻めにおいて、彼女らは一度として己の魂を呼ばなかった。


 炎の魔剣レヴァンティン、鉄の伯爵グラーフアイゼン、風のリングクラールヴィント。


 魂なき騎士の刃は、せいぜい腐敗した騎士もどきを縊る程度が関の山、地獄の軍勢を迎え撃つには足りない。


 ましてや、並ぶもの無き絶対者、黒き魔術の王サルバーンを相手にするなど、夢のまた夢。



 「それに、今の騎士達は幸せです。優しい貴女の下で、暮らせるのですから」


 「あ、う、ええっと」


 「ありがとうございます、私からも改めて、感謝の言葉を述べさせていただきます」


 「えと、いえ、こちらこそ」



 そしてふと、はやては気付く。



 「そっか、貴女が闇の書さんなら、わたしを皆と逢わせてくれたのは、貴女なんやね」


 「残念ながら、私が自らの意思で選んだのではありません。私の転生先は、乱数決定されますから」


 「そんなんええねん、貴女が私のところへ来てくれたから、私はあの子らに逢えた、そして、今は貴女とも逢えた、素直に嬉しいし、感謝したいと思う、あかんか?」


 「いいえ、それでしたら、何も問題はありませんね」


 「ありがとう、せやけどごめんな、わたし、ずっと貴女に気付かんで………シグナム達も言ってくれればよかったのに」


 「いえ、私はページの蒐集が進まないと、起動できないシステムですから、ページ蒐集を望まない貴女への、烈火の将と、風の癒し手の気遣いです、酌んでやってください」


 「うん………ページ蒐集せんと、貴女は外へは出られへんの?」


 「対話と、常時精神アクセスの機能起動に、400ページの蒐集と主の承認が、私の実体具現化と、融合機能の発動は、全ページの蒐集が済み、貴女が真の主となられなければ無理です」


 「………えっと、実体具現化いうのが出来れば、シグナムやヴィータと同じように、一緒に暮らせるようになるん?」


 「ええ、この姿で顕現できますから、それに、必要に応じて貴女と融合し、魔導書の全ての力を使うことが出来るようになります」


 「そっか、私が闇の書の真のマスターになれたらええねんやけど」


 「望まぬ蒐集を、命じることもありません」


 「うん………」



 そして、彼女は静かに告げる。



 「現状で、ここまで深層までのアクセスは危険です、目覚めのタイミングで、表層までお送りします。以降、間違って入ってこられることがないよう、システムでロックをかけておきます」



 果たして、彼女は気付いているだろうか、本来は入れぬはずのはやてがここにいるということは、闇の書のシステムそのものにバグが生じているということに。



 「申し訳ありません」


 「謝らんでええけど、寂しいな、せっかく逢えたのに」


 「はい、私もです」


 「じゃあ、お別れまでの間、主としてお願いしてもええか?」


 「ええ」


 「シグナム達にはもうお願いしとることで、わたしの家族になるなら絶対やらなあかんことや」


 「はい、なんなりと」


 「ほんなら―――」




 刹那の邂逅の時が過ぎていく。


 やがて、目覚めの時が訪れ、少女に残る記憶はなく、ほんの僅かの名残があるだけ。


 それを、一人残された彼女は、悲しいとは思わなかった。



 「それは構わない、だが、それ故に、遠からず訪れる破滅を止める術が、私には何もない」



 闇の書を司る彼女は涙する。既に、中枢であるはずの自分ですら止められぬほど広がりきってしまった闇に。


 そして、闇の根源を認識することすら出来ない、力無き己に。



 「夜天の光は、闇に堕ちた………私は主を救うことも、騎士達を止めることも、何も出来ない」


 涙が、頬を伝う。


 まるで、雪のような彼女の髪が溶け出しているかのように。



 「どこの誰でもいい、どんな手段でもいい、この絶望の輪廻を、断ち切ってはもらえないか」


 彼女は願う、願うしか出来ない。


 「あの優しい主と、一途な騎士達だけでいい、救ってはもらえないか………烈火の将、風の癒し手、蒼き狼、紅の鉄騎――――そして、我が主…………八神はやて」


 誰か、誰か―――


 「神でもいい、悪魔でもいい………どうか、あの子らを――――救ってくれ」









新歴65年 12月9日  第97管理外世界  海鳴市  八神家  PM7:00



 「わたしはちょお、お庭に出てるな」


 「外は寒いですよ、はい、上着」


 「おおきにな、シャマル」


 その日の夕食後、はやてはただ一人で庭へ出る。


 かつて、シグナムに抱かれながら共に出て、蒐集を行ってはいけない、自分は今のままで幸せだからと、告げたその場所へ。


 ただ―――


 「闇の書、一緒に来るか?」


 ただ一つ、古い魔道書が、彼女につき従う。



 「今夜も綺麗な星空やね」


 はやては、宝石が散りばめられた暗幕の天蓋を見上げ、静かに呟く。


 「闇の書は、ずっと昔から生きてて、色んな星空を見てきたんやろ?」


 彼女の頭上には、人より遥かに永い時間を輝き続ける悠久の星々。


 「この世界の星空はどないや? 昔と同じように綺麗か?」



 少なくとも、古の白の国の星空は、どこよりも美しいものであったと、夜天の騎士の誰もが誇れるだろう。


 未だ対話する力を持たない魔導書には返す言葉はなく、はやても当然それを理解している。だが、決して無意味だとは思っていない。



 「―――なあ、わたしの中で、闇の書の存在が少しずつ大きくなっていくんが分かるんよ。だんだん、だんだん、一つになっていく気がしてる」


 騎士達が如何に隠し通そうとしても、覆いつくせぬ絆がある。


 「せやけど、ページは埋まってへんもんな………当たり前や、シグナムと約束したからな」



 そして、はやてが“あの子達”と呼ぶ家族には告げることのない、彼女の本心を語る。



 「なあ、わたしはな、この足も身体も、別に治らんでもええんよ、………というか、石田先生には悪いけど、治ると思ってない」


 彼女はこれまで、一人で生きてきた、だから、死ぬことにさして恐怖はなかった。


 「そんなに長くは生きられんでもええ、あの子らがおらんかったら、わたしはどうせ一人ぼっちやしな」



 だけど―――



 「そやけどあの子達が、シグナムやシャマル、ヴィータやザフィーラが、わたしを必要としてくれている間は、それまで、わたしは絶対、死んだり壊れたりせえへんで、これはもう、絶対に絶対や!」



 今は違う、家族のために、不自由な身体であっても、どんなに苦しいことがあろうとも、彼女は生き抜くと決めている。


 それが、八神はやてという少女の強さであり、最後の夜天の光の根源であった。



 「わたしは、貴女と皆の―――マスターやからな」


 はやては、彼女を“貴女”と呼んだ。


 意識してのことではない、だが、確かにはやてはそう呼んでいた。


 母のように、自分を優しく、かつ力強く抱きしめ、守ってくれた彼女を。



 「はやてちゃん、風邪ひいちゃいますよ、中に入りましょう」


 「はあい!」


 「今御迎えに」



 そして、シグナムがはやての元へ歩いてくるまでの僅かの時。



 「星の光は、幾歳遥か、今は遠き……夜天の光」


 「え」


 「なんでもないよ」


 「そう……ですか」




 <星が、光が闇に消えても、それでも私は最後まで、夜天の主としての責を全うする。誰にも迷惑かけへんから、誰の邪魔もせえへんから、わたしはただ、わたしに幸せをくれた子達を、精一杯幸せにしたいだけやから―――>



 彼女はもう一度、闇に染まった天蓋と、その中で輝く白い光達を見上げ―――



 <だからお願い、神様も、悪魔の人も―――――わたし達のこと、そっとしといてな>


 少女は、星へと祈りを捧げていた。







 古の白の国において、神よりも、悪魔よりも未来を見通す力を持った賢者が、確かに告げている。



 (いつかは分かるさ、長き夜と旅の果てに、最後の夜天の主がきっと証明してくれるとも)



 遥かに昔、夜天の魔導書の管制人格である彼女からすら忘れ去られてしまった、遠い遠い過去の記憶。


 どこまでも不思議で、どこまでも深い知識を持った老人が、かつて彼女にそう語ったことを。


 深い悲しみに沈む彼女が、思い出すことはなく、心優しきその主が知る由もない。



 今はまだ闇に覆われ、夜天の光は遠い。



 しかし、繋がれた絆はなくならない、騎士の皆が忘れてしまっても、魂たる彼らが覚えている。



 管制人格すら忘れている故に、真の主ですら、既に知る術がないその記録を、いつか誰かに伝えられる日を望みながら―――



 闇の書のシステムの一番下、何にもアクセス出来ないがために、歴代の主の誰からも改変を受けなかった彼らは、その時を待ち続ける。








あとがき
 今回は、A’S編サウンドステージ02、第6.5話、『今は遠き、夜天の光』をベースに、本作品オリジナルの過去編を加える形で構成されています。A’S本編やサウンドステージを聞くたびに想うことが、八神はやてという少女の優しさと、その心の強さです。ギャグ要素の強いSSなどではかなり愉快なキャラになることが多いはやてですが、家族想いの、どこまでも優しく真っ直ぐな心を持った純粋な少女という印象を自分は強く持っています。ですので、本作品のStSにおけるはやても、単身でガンガン動くタイプよりも、皆を支えるお母さん、といった感じにしたいと思っています。何より、最大の相違点ははやての隣にリインフォースがいてくれることだと思いますが、機動六課のフォワード陣がそれぞれに働いて帰ってくれば、はやてとリインフォースがおいしい鍋を用意して待っていてくれる、みたいな感じで。
 過去編と徐々に終焉へと向かっていき、デバイスが繋ぐ“絆の物語”も収束する時へと進んでいきます。夜天の騎士に仕え続ける彼らと、主の命題を守り続ける古いデバイスの邂逅が、果たして如何なる解を導き出すか、伏線はあちこちに仕込んであり、中にはStSで回収されるものもありますが、頑張っていきたいと思います。






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