Die Geschichte von Seelen der Wolken
夜天の物語
第五章 中編 知られざる騎士叙勲
ベルカ暦485年 ギラルドゥスの月 白の国 北西部 上空
「サンジュ、ビード、破れたか………不甲斐無い奴らめ」
白の国の北西にて、侵攻軍司令官のアルザングは己の権能、固有技能(インヒューレントスキル)“幻惑の鏡面”にて姿を隠し、烈火の将シグナムと星光の殲滅者シュテルの戦いを観察しながら、各地の戦況を把握していた。
一言で述べるならばそれは芳しいものではなかったが、“蟲毒の主”にとっては痛恨事というわけではない。もとよりこの一撃で白の国を陥落させることは困難であると悟っており、この戦は白の国の実戦力を図るための前哨戦ともいえるのだ。
それ故、“闇統べる王”やヘルヘイム最大の戦力である“黒き竜”はこの戦に参陣していない。片方は未だ目覚めえておらず、片方は未調整ということもあるが、やはりそれらが攻め込む最終戦争の前哨戦という意味合いが強いことが最大の理由であった。
ただし、黒き魔術の王サルバーンだけは別だ。軍をどう動かすかも、構成や補給に関しても全権がアルザングに委ねられており、彼自身が指示を出したのは“白の国へ攻め込むこと”と半数の騎士や魔術師に対する“放浪の賢者を討ち取ること”の二つのみ。サルバーンは如何なる時も己の意思によってのみ動く、他の者の都合など顧みることなどない。
「だからこそ、白の国の攻略は我が使命。歯車は噛み合っている」
“蟲毒の主”は黒き魔術の王に忠誠を誓い、彼の後を追うことに全てを懸けている。ならばこそ、サルバーンが若き頃を過ごした白の国を攻め落とすことは難行であると同時に、自身にさらなる飛躍をもたらすであろうと期待してもいた。
とはいえ、ヘルヘイムの戦力がここまで不甲斐無いというのも予想外ではあった。本来の予定ならば彼は姿を隠したまま白の国の戦力を把握することに務めるはずであったが―――
「サンジュ、ビード、三号(ドライ)、四号(フィーア)、五号(フェンフ)、悉く潰されたか。六号(ゼクス)は――――こちらも時間の問題だな」
流石にこのままではまずい、攻め手の中で最大の戦闘能力を誇る“星光の殲滅者”シュテルも烈火の将の前に徐々に劣勢へと追い込まれつつある。アルザングが周辺に座することで、シグナムが周辺にも意識を振り分け、全力での攻勢には出ていないにもかかわらずだ。
さらに―――
「む、七号(ズィーベン)、八号(アハト)、九号(ノイン)、何をしている――――いや、考えるまでもないか」
人造魔導師や空を舞う魔導機械の稼働状況はアルザングの把握するところでがあるが、その心の内までは予測するしかない。真に遺憾ではあるが、どうやらあの三騎は“成功作”とするには満たない者達であったらしい。
「一号(アイン)は、自力で退くであろう。六号(ゼクス)は墜とされても構わぬが、若木の副隊長を自由にはできんな、そして、二号(ツヴァイ)、あれをまだ失うわけにはいかぬ」
迅速なる決断とともに対処を開始する行動力、それがヘルヘイムの執政官であり、黒き魔術の王の片腕である証。
残る空中戦力をヴィータの下へ集結させつつ、彼自身は東部へと駒を進める。ついに、“蟲毒の主”も前線へと躍り出たわけではあるが―――
自身が唯一把握していない場所があることを、彼は失念していた。そこにはヘルヘイムの戦力が存在せず、白の国の防諜機能が最も優れている場所であるため当然ではあったが、その主が当然とはかけ離れた行動に出ていることまでは、読むことは出来なかった。
ベルカ暦485年 ギラルドゥスの月 白の国 東部
“破壊の騎士”が倒れ、その残骸が散らばる戦場跡。
そこに残るは魔力が尽き、同時に戦う意思までも失っている青い髪を持つ人造魔導師の少女と―――
「………が、は」
破邪の剣アスカロンを地に突き立て、辛うじて大地に伏すことだけは拒んでいるものの胸から流れ出る血は止まらず、最早余命いくばくもないことが明らかな若き騎士のみであった。
「………」
その姿を前に、青髪の人造魔導師の少女、レヴィは己の心が分からなかった。今の自分に出来ることはなく、死んでいく彼を見守ることしか出来ないが、仮に魔力が残っていたとすれば自分はどうしていただろうか。
苦しまぬよう、速やかに止めを刺したか。
捕虜とするため、転移魔法で連れ帰ったか。
それとも、あるいは―――
<分からない、僕は、どうしたいんだ……>
そんな、短い人生において初めて葛藤というものを知った少女の前に。
「不様なものだな、二号(ツヴァイ)」
感情がないようでありながら、どこか暗い愉悦を腹に秘めたような無気味な笑みを浮かべながら、人造魔導師の少年が降り立った。
「七号(ズィーベン)………」
「そう、七号(ズィーベン)、七号だよ。一号(アイン)、いいや、シュテルやレヴィと違い名前すら無き戦闘人形、夜天の騎士やその若木の隊長らと戦う機会すら与えられず、“破壊の騎士”ごときの追跡と監視を任された哀れなる七号さ」
「どう……したんだ?」
「どうしただと? ああ、分からないだろうな君には、虫けらの如くあの蟲毒の壺に落とされ、必死の思いで這い上がった僕達がどれほどの苦労をしてきたかを、三号(ドライ)、四号(フィーア)に追い抜かれ、あまつさえ最後発であり、蟲毒の壺に落とされてもいない君にまで追い抜かれた地虫の気持ちなど」
彼女には分からない。最後発である自分が、生まれ持った才能によって蟲毒の壺に落とされることもなく二号(ツヴァイ)となり、レヴィという名を与えられたことを、雷刃の襲撃者と名乗ることを許されていることを、下位の者らがどう思っているか。
才能溢れる天の星として生まれた者には、地獄を潜り抜け、戦う力を得てもあっさりと抜かされる地の星の者らのことは分からない。シュテルであれば「下らないですね」と一蹴するだけのことではあるが、今のレヴィにはその怨嗟の声を無視することが出来なかった。
「目ざわりなんだよ、お前は……………お前らがいる限り、僕達は永遠に名すら与えられない人形のままだ」
さらに、
「だけど、何かが欲しくば奪い取るのがヘルヘイムの掟」
八号(アハト)が、
「奪わせてもらうわよ、小さなお嬢さん…………黒き魔術の王に作られし“成功作”」
九号(ノイン)が、
「「「 我等の、糧となれ……!! 」」」
ようやく巡ってきた機会を前に、溜めこんできた憎悪の念を解き放つ。
「君達………」
だがしかし、それらを前にしてレヴィに恐れはなかった。困惑はあったが、その行動の理由も明らかになった以上、思うことは何もない。
彼女は、“蟲毒の主”アルザングが教育担当であり、原初の人道魔導師であるシュテルと一番仲が良かった。共に黒き魔術の王サルバーンに作られし存在で、蟲毒の壺を経験していないという共通点はあったが、それを抜きにしても性格の波長が合っていたのだ。
そして、最年長であるシュテルから教えられたことは、人造魔導師は能力順に番号が与えられており、そのまま製造された順とはなっていないこと。製造された順ならば、一号(アイン)、七号(ズィーベン)、八号(アハト)、九号(ノイン)、五号(フェンフ)、三号(ドライ)、四号(フィーア)、六号(ゼクス)、二号(ツヴァイ)であること。
つまり、アルザングに製造され、蟲毒の壺を潜り抜けた者達の中でも、彼らは追い抜かれた者なのだ。さらに、武勲を上げたものから名が与えられる法である以上、彼らがその機会を得られる可能性は低い、現に、ヴィータ、リュッセ、シグナムと戦う機会を彼らは与えられなかった。
とはいえそれは―――
「そんなだから君達は、アルザング様に認められないんだよ」
ヘルヘイムの法においては、ごくごく当たり前のことに過ぎない。力こそが全てであり、レヴィの方が数段優れているのは事実、そこに怨嗟の念を挟むほうがおかしい。
「ふざけるな! 蟲毒の壺を経験していない貴様に何が分かる!」
声を上げるのは八号(アハト)だが、三人の共通した念ではあるのだろう。
「………」
それに対しては返す言葉を持たないレヴィだが、自分の言が正しかったことを悟った。
確かに、辛かっただろう、苦しかっただろう、それは同情に値する事柄であるかもしれないが―――
「ヘルヘイムの法は、弱肉強食――――弱い者、苦しんだ者のことは………顧みられることはない」
「「「 ―――!!! 」」」
白の国の少年、リュッセに助けられたレヴィは今、その絶対の法則そのものに疑問を持っていた。
だからこそ、より澄んだ目でヘルヘイムの法を見つめることが出来たのだ。そして、彼らがその法から外れている故に認められないことも。
彼らの主張は、“自分達はこれほど苦しみ、大変だった”という苦労アピールでしかなく、白の国では同情されるであろうが、ヘルヘイムでは侮蔑の眼差しを向けられるのみ。
つまりは、向上心が足りていないのだ。三号(ドライ)、四号(フィーア)、五号(フェンフ)などはレヴィに追い抜かれたことに憎悪することも嫉妬することもなく、ただひたすら自らの技を練磨した。結果として、退くことを知らないが故に烈火の将に殺されたのは皮肉としか言いようがない結末ではあったが、戦場とはそういうものだ、女子供であろうとも容赦なく死をもたらしていく。
“蟲毒の主”アルザングが求める者とはつまりはそういう者達であって、自分達の不幸をひけらかし、他者に嫉妬し、その足を引いて貶めようとする精神性ゆえに、彼らは後発組に追い抜かれ、番号が低かった。一応、蟲毒の壺を生き抜いた“成功作”ではあったが、たった今を以て“失敗作”となったことに気付いていない。
―――いや、たった今、そのことに気付いてしまったのか。
「黙れえ!」
七号(ズィーベン)が激昂し、手に持つ斧型のデバイスを振りかぶる。
「遺言はそれだけか! ならば死ぬがいい!」
初めから殺すつもりであれば、無駄な会話など挟まず、即座に殺すべき。
そのような理すら実行出来ない故に、“蟲毒の主”は彼らを監視要員くらいにしか使わなかった。人造魔導師であるため魔力資質は高く、蟲毒の壺を生き抜き、戦闘訓練も積んでいるが、戦士となるのは決定的な要素が欠けている。
だからこそ―――
「失せろ」
短い呟きと共に繰り出された剣閃をまともに喰らい、弾き飛ばされることとなった。騎士甲冑があったため血が出ることはなかったが、三人揃って何の反応も出来なかったのはその攻撃が完全に想定外であったからだろう。
「君は……やはり……」
そして、青髪の少女にとってはもはや驚くに値しないことであった。彼は確かに言ったのだ、自分の目の前では君を死なせないと、それこそが我が騎士道であると。
ならば、胸に穴が空いていようと、そこから大量の血が流れ出していようと、後数分もない命であろうと、若き騎士リュッセの障害にはなりえない。己の騎士道を最後まで貫き通すことしか彼は考えていないのだから。
「馬鹿な! その傷でなぜ動ける!」
「何らかのデバイスでも使っているのか……まさか、融合騎を!」
「だけど、それならそれでやりようもあるわ!」
自分達の恐れを振り払うように叫ぶ三人の人造魔導師。
それが、彼と戦っている時の自分の姿であったのだろうか、と、レヴィは自嘲するような瞳で見つめていた。
「アスカロン………行くぞ」
『Jawohl.』
そして、騎士の少年は白色の魔力光をたなびかせ、己の最期を前に微塵も臆することなく―――
「フルドライブ―――――モード、“ゲオルギウス”!!」
『Grenzpunkt freilassen! (フルドライブ・スタート)』
その全ての力を燃やし尽し、最後の進軍を開始した。
ベルカ暦485年 ギラルドゥスの月 白の国 南西部 上空
「らああああああああああああああ!!!」
“蟲毒の主”アルザングが予想したように、この空域における戦闘にも決着の時が訪れた。
幾合にも及ぶ交錯の末、ヴィータの持つ鉄鎚が人造魔導師六号(ゼクス)の防御を撃ち貫き、一切の躊躇なくその頭部を粉砕していた。
六号(ゼクス)の能力も他に比べて劣るものではなく、ヴィータも楽に勝利したわけではないが、“星光の殲滅者”シュテルに比べれば数段劣り、互角とは呼べなかったが彼女と渡り合った若木の副隊長に一対一で勝利するのは今一歩及ばなかったといえるだろう。
「ちっ、手間取らせやがって、さっさと向かわねえと―――」
ローセスが風の谷で戦い始めてより既にかなりの時間が経過している。移動の際にカートリッジを補給できる自分と違い、向こうにはそんな暇すらなく絶え間ない攻撃が仕掛けられているはず、夜天の騎士の中で最も戦闘継続時間が長い盾の騎士とはいえ、やはり限界というものはある。
伏兵である“鷹の目の狩人”クレスのこともヴィータは把握していたが、彼は接近戦が主眼ではなく長距離からの狙撃を得意とする生粋の狩人、星光の殲滅者シュテルとは別の意味で騎士の天敵と言える存在なのだ。
それ故に、拠点防衛に向いている戦闘スタイルとは言い難い。敵が人造魔導師のような限られた数の強力な戦力であるならば最大の効果を発揮するが、押し寄せる雑魚の群れというのは狙撃手の最も苦手とするところだ。狙撃手の攻撃は一撃一殺が基本であり、数千の敵に対処できるものではない。
そして、人間の軍と異なり、指揮官が打ち取られたところで改造種(イブリッド)の軍勢は怯むこともなければ前進を止めることもない。破壊し尽くすまでどこまでも突き進む存在が彼らであり、それを止められるとすれば司令官たる“蟲毒の主”アルザングか、黒き魔術の王サルバーンのみであろう。
「―――! ちっくしょ!」
それを知るがために兄のもとへと急ぐ少女の前に、無数の魔導機械と空戦を可能とした改造種(イブリッド)が立ちはだかる。
彼女の行動を“蟲毒の主”は予想しており、その進軍を阻むための策を事前に打っていた。彼女の位置から風の谷へ向かうルートには無数の魔導機械と改造種(イブリッド)が配され、彼女の進軍を妨げるよう牙を向く。
「そこを―――どけえ!!」
道を阻む者がいるならば、ヴィータが成すことはただ一つ。
若木の副隊長は鉄鎚を手に赤い閃光となり、立ちはだかる敵へと突撃を開始した。
ベルカ暦485年 ギラルドゥスの月 白の国 南部 風の谷
「おおおおおおおおお!!」
屍が積み上がる、死体が吹き飛ぶ、かつてヒトガタを成していたモノがそうでないものへと化していく。
指揮官であった“虐殺者”が滅んだ後も、風の谷へと攻めよせる異形の軍勢には果てというものがまるで見えない。“爆撃の刃”のよる圧倒的な火力こそなくなったものの、守護の星を殲滅せんとする戦意は微塵も衰えることなく、盾の騎士ローセスの首のみを目がけて突き進む。
いやむしろ、“戦略的”に兵力を小出ししていた指揮官がいなくなったことでその凶暴性、押し寄せる怒涛の如き勢いは増しているようにすら思われる。通常ならば隊列や陣形の乱れは防衛側にとって付け入る隙となりうるが――――
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!」
この地に満ちる軍勢はヒトに非ず。生存本能が破綻し、己の命などあってもなくとも破壊できるならばそれで構わんとばかりに突き進み続ける狂乱の獣。彼らは決して止まることなく死への行軍を続行する。
「フェイルノート、撃ち貫け!」
だが、風に祝福されし白の国の門の守り手も今や一人ではない。盾の騎士ローセスの壁を突破して攻め入ろうとする者達は、鷹の目を持ちし狩人の手によって脳髄と心臓、改造種(イブリッド)といえども砕かれれば機能停止へと追い込まれる急所を粉砕されていく。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!」
しかし、異形の軍勢には果てがない。いや、果てがないわけはないのだが、守り手たる二人にとってはそう感じられる程の圧力でもって白の国の防衛陣を北へ北へと押し込んでいく。
「縛れ! 鋼の軛!」
とはいえそれも、敵が盾の騎士ローセスを突破したことを意味するわけではない。突出した部分と後続を分断する“軛”によって、切れ目なく襲いかかることをこそ強みとしていた異形の軍勢の前進が止まる。
これこそ、鋼の軛の真骨頂である。攻撃と捕縛の特性を兼ね備えるが故に、敵の分断を可能とする盾の騎士が最も得意とする魔法にして、敵を止めることに特化した防衛戦の要。
「降り注ぐは炎、全てを焼き尽くす流星となりて、眼下の敵を灰燼ヘ帰さん……」
そして、ローセスと共に白の国で育ち、共に技を研鑽したクレスにとって、その意図を看破し合わせることなど造作もない。即興でありながら、それを超えることなどあり得ない程の連携を見せる。
「ウルスラグナ!」
“外さずの弓”、フェイルノートより強力な一撃の矢が放たれ空中で爆砕、数十もの魔力で構成された矢へと分かたれ、さらにそれらは炎熱変換の特性を持ち、突き刺さると同時に爆炎を生み出す。破滅の矢によって作り出されるその光景は、生きることそのものを許さぬ焦熱地獄。
「それが、例の矢か」
「ああ、騎士シグナムの魔力を込めていただいた特製の矢だ。ただし、炎熱変換を持たない僕ではそう何発も撃てないぞ!」
“鷹の目の狩人”クレスは騎士ではなく、調律師こそが本分である。ならば、他者の力を借りて戦うことは恥でも何でもなく、それを可能とした技術こそが誇りなのだ。
魔力を込めるという点ではカートリッジと変わらないが、彼の矢は炎熱変換や電気変換といった性質が変化した魔力を込め、本人以外であってもその力を発揮することを可能とする。だが、本人ではない以上は当然そこには負荷が発生し、その証としてクレスの右手は火傷を負っており、連発しようものなら焼け落ちることすらあり得よう。
「十分だ! 敵を押し戻すことが出来るならば―――アイゼン!」
『Jawohl!』
だが、その程度の傷を厭う者ならばそもそもこの修羅の煉獄に馳せ参じなどしない。彼もまさしく騎士と同じ類の狂気に身をおいている男であり、そうでもなければ盾の騎士ローセスの親友が務まるはずもない。
「伸びろ!」
そして、クレスが焼き尽くすことで取り戻した領域を、ローセスはグラーフアイゼンの伸縮機能を用いることで踏破していく、大地が焼け焦げ凄まじい熱を持っているための移動手段であるが、普通に考えるならば空戦が可能なローセスにとっては必要のない行為でしかない。
だが、移動を全てグラーフアイゼンに任せることで、ローセスはマルチタスクの全てを格闘戦に費やすことが出来る。ローセスがデバイスを用いぬ格闘戦を得意とするからこその業であり、まさしく、騎士とデバイスの連携の極地。そして、それを可能とする存在こそが、調律の姫君によって作られし意思持つデバイスを操る夜天の騎士。
「さあ行くぞ! 風の門を通りたくば我が盾を突破して見せよ!」
押し込まれていた状況から最初の地点まで巻き返し、ローセスは異形の大群を迎え撃つどころか突撃していく。それはこれまでならばあり得ない戦術であったが―――
【ローセス、背後は任せろ】
これまでと違う点は、敵を全て食い止める必要がないということ。ローセスが切り込むことで谷に敵が侵入しようと、それらは全て“鷹の目の狩人”によって仕留められていく。さらに、押し込まれることになろうとも幾度かならば挽回も可能であるならば、思い切った攻勢に出ることも不可能ではないということだ。
ただし、癒し手がいるわけではないため、ローセスが負傷すればそれまでという状況は変わらない。さらに、回復の結界があるとはいえ、“虐殺者”を仕留める際に使用した鋼の軛やラケーテンフォルムでの突撃はローセスの魔力を著しく減少させていた。回復するといってもそれは静止していればの話であり、戦い続けていれば気休め程度にしかなりえないのだ。
【ああ、俺とお前の二人ならば、どんな敵だろうと通すものか】
だがしかし、光明はある。ザフィーラは姫君の護衛であるため無理があるが、白の国内部の敵を片付けたならばいずれ烈火の将シグナムがこちらに駆けつけるはず、もしくは、リュッセやヴィータという可能性も考えられるが、彼らが来られない可能性や、最悪の状況もあり得ないわけではない。
それはつまり、既に白の国で生き残っているのは彼ら二人のみであり、敵の空戦力によって白の国が既に滅ぼされている可能性であるが―――
【今はただ、この地を死守するのみ】
それは考えても意味のないこと。彼らに出来ることは命の続く限り風の谷を守り抜くことであり、それ以外の選択肢などないのだから。
断崖を綱渡りするような極限の防衛戦は、なおも続く―――――守護の星が墜ちるその時まで
ベルカ暦485年 ギラルドゥスの月 白の国 北西部 上空
「紫電一閃!」
「ああぁぁ!」
北西の空域、最高の戦力同士のぶつかり合いといえた戦場においても、ついに終わりが訪れる。
守り手である白の国の近衛騎士隊長、烈火の将シグナムと攻め手において最大の破壊力を備えた星光の殲滅者シュテル、両者の戦いはしばし拮抗していたが、ある時を境に片方へと傾くこととなった。
それはすなわち、“幻惑の鏡面”によって近くの空域に潜みつつ二人の戦いを観測していた“蟲毒の主”アルザングが移動した時であり、近くに潜んでいた油断ならぬ敵手が離れたことを、シグナムは正確に洞察したのであった。
何とも表現しがたい感覚ではあるが、戦場から“敵意”が消え去ったとでも言うべきか、それをシグナムは歴戦の勘によって感じ取った。如何に固有技能を用いて姿を隠そうとも、人間の痕跡を完全に消すことというのは不可能に近い、それはすなわちこの世界から存在しなくなることと同義なのだから。
特に、この白の国は風の精霊の力が強く、独特の魔力場を形成している。アルザングは白の国出身ではないため、“幻惑の鏡面”も完全に効果を発揮してはいなかったという経緯も存在していた。
「………これまでのようですね」
人造魔導師のナンバリング01、シュテルは己の負けを悟り、即座に撤退のための体勢に入る。烈火の将に及ばぬと悟れば撤退せよ、それが彼女の教育担当でもある司令官アルザングの命令であった。
彼女自身が重傷を負ったわけではないが、射撃の要であるルシフェリオンが炎の魔剣レヴァンティンの紫電一閃の直撃を受け損壊している。如何に黒き魔術の王が作り上げたデバイスとはいえ、アームドデバイスでない以上はその一撃に耐えきれるわけもなかった。
「貴女の勝利を讃えましょう、烈火の将シグナム。そして、再戦のあかつきには私が勝利することを誓います」
それだけの言葉を残し、ルシフェリオンのカートリッジをロード、搭載されていた転移機能を発動させシュテルの姿はかき消える。
湖の騎士シャマルのクラールヴィントに匹敵するほど転送に特化した術式がそこには存在しており、シュテルの膨大な魔力をもってすれば白の国の外程度まで瞬時に転移することが難しいことではなかった。
「……逃がしたか」
だが、シグナムはそこに違和感もまた感じ取っていた。そもそも白の国を本気で落とすつもりであるならば、デバイスに逃走用の術式など搭載しておくはずはない。
最後の転移魔法はシュテルが紡いだものではなく、彼女はただ魔力を込めただけだ。そうでなければ術式を紡ぐ間にシグナムは距離を詰め、切り捨てていたであろうから。
<この侵攻は、前哨戦ということか? もしそうであるならば……>
今は逃走用に確保されていたデバイスのリソース、決戦時においてそこに積みこまれるであろう機能とは―――
(フルドライブ機構をほとんど完成させた頃、さらにその発展形についてあやつが私に語ったことがあった。リンカーコアの全力を引き出す機構のさらに上、限界を超えた力を引き出すシステム、リミットブレイク機構を)
稀代の調律師、フルトンの言葉が思い出される。それは予感ではあったが、確信に近いものをシグナムは感じていた。
<いや、今考えても詮無いことか、今は―――>
脳内で考察を続けながらも、シグナムは一直線に飛翔し紫色の流星となる。向かう先は、白の国の東部。
彼女の役割は白の国に攻め込んだ空中戦力を駆逐することであり、ただちに風の谷のローセスの下へ駆けつけたい気持ちもあったが、まずは国内の敵を一掃し安全を確保せねばならない。
湖の騎士シャマルが健在であれば、守りを彼女に委ねると同時に各地の戦況を詳しく知ることも出来たが、それは最早不可能なこと、現実を見据え、出来ることを成すしかないのだ。
そして、シグナムが向かった先はリュッセが戦っているはずの東部、恐らく自分の近辺に潜んでいたであろう“蟲毒の主”アルザングが消えたことが不可解であり、彼がもう一人の人造魔導師の下に現れる可能性が高いと彼女は判断したのである。
それは半分正しく、半分外れでもあり――――
その地に到着した時、烈火の将は一つの魂を受け取ることとなる。
ベルカ暦485年 ギラルドゥスの月 白の国 東部
そして――――幕が下りる時が来た。
一人の人間の人生を物語とするならば、その終焉において幕は下りる。早いか遅いかには個人差があって然りではあるが、彼のそれは果たしてどうであったろうか。
それは、ある少年の物語にして、大人になる前に騎士となり、戦場で果てた若き騎士の物語。
騎士の家系に生まれ、両親と同じく仕える国の盾となることを志し、そのための技術を学ぶべく、古き技を今に伝え、今の技を未来に伝える学び舎の国へとやってきた、一人の少年。
………思い返せば、そこでの日々こそが彼の人生そのものであり、故郷や家族というものとは奇妙なまでに縁の薄い道のりであった。騎士というものは、代を重ねてその意思を継承していくものであるというのに。
それは、騎士であった父と母が遺した、親としての最後の心。
人心が王家より離れ、滅びゆく国に息子を道連れとすることを拒んだ彼らは、誉れ高き白の国の夜天の騎士に、息子の将来を託したのだ。
だが、結果だけを見るならば、それは正しい選択ではなかったのかもしれない。
ミドルトンという少年の故国を滅ぼす遠因となった黒き魔術の王、その槍が最初に向かう先こそが白の国であり、夜天の騎士の使命もまた、その槍から逃れることではなく、槍の担い手を滅ぼすことにあったから。
そして、彼もまた白の国の若木の隊長、いや、夜天の騎士の一人として戦い、果てることとなった。
だが、少年の心には一部の悔いもありはしない。むしろ、自分をこの国へ送り、偉大なる騎士達と共にあることを許してくれた両親には、感謝してもしきれなかった。
それは、戦いの中で果てるというありきたりの最期であり、騎士の武勲として世に残る誉れは何もない、無意味な死であるかもしれないが――――
「我が騎士道―――貫き通しました。父上、母上」
少年にとっては、それだけで十分、それこそが、彼の人生にとっては何よりも高き誉れなのだから。
少年の人生も平坦なものではなく、信じていた騎士道の在り方も不変のものではなかった。
特に、己の故国が騎士の裏切りによって滅び、民の支持を失った王家を守るために父と母は戦い、結局は王家もろとも死に絶えたという事実は、少年の進む道に重い影を投げかけた。
“人のために生きることは真に己の道なのか、騎士たる者よ心せよ、騎士の魂は誰がために”
その言葉が、少年の肩に重くのしかかる。守るべき国、忠誠を誓うべき主君、受け継ぐべき誇りを失った少年は、これまで鍛えてきた自身の力を、一体誰のために使うべきか、見出すことが出来なかった。
しかし、闇の中を彷徨う日々も長くは続かなかった。少年にとっては何よりも眩しい太陽の如き少女が、闇を祓い、道を照らしてくれたから。
“だからさ、お前も夜天の騎士になっちまえって”
少女にとっては何気なく放った言葉かもしれない、むしろ、少年と共にあることこそが少女にとって当たり前であったから、自然とそのような言葉が出たのか。
だが、その言葉は間違いなく、闇を彷徨う少年にとっての灯となったのだ。
それからのおよそ二ヶ月半、両親と故国を失ってすぐであるという状況には変わりなく、普通に考えるならば辛く苦しい日々であるはずのその期間。
少年にとってその日々は、それまでの11年を足し合わせたよりもなお価値のあるものだった。己の人生、存在そのものを懸けるに足る騎士道を見出し、それを貫くための技を磨くためのその時間は、黄金の如き輝きを確かに放っていた。
故にこそ、ここで果てる少年の胸に恐れはない。いや、ないわけではないが、それよりも遙かに大きなものが心の隅まで行き渡り、恐れというものを果てへと追いやってしまったのだろう。
父と母がミドルトンに最期まで仕え、国に殉じたことも、今ならば分かる。騎士以外の者には理解できない狂人の理論なのかもしれないが、それで構わないと少年は想う。
「空が―――蒼い」
いつの間にか雲は去り、朱に染まっていた空も今はなく、僅かに青みを湛えた薄墨に染まっている。
機械の残骸と三つの屍が横たわり、青髪の少女が傷なく座り込んでいる、風の吹く丘にて―――
少年は仰向けに倒れたまま、静かに空を見上げていた。
「瀕死の傷を負った状態で、人造魔導師三人を破るとは。この少年が優れているのか、それとも私の作品が余程の不良品であったのか、まあ、両方といったところであろうか」
そこに、音もなく、いなかったはずの男が現れる。
だが、少年がその言葉に反応することはなかった。その男が敵意というものを備えているならば騎士として見据え、下手をすれば立ちあがったかもしれないが―――
奇妙なことに、男には少年を害する意思は無いようであった。
「レヴィ、この愚か者が。貴様のデバイスにもいざという時の転移術式を組みこんであったというのに、全てのカートリッジをロードして何とする」
「あ……アルザング…様」
シュテルのルシフェリオンとレヴィのバルニフィカスを作り上げたのは黒き魔術の王サルバーンであるが、その調整は片腕たる彼の役目であり、リミットブレイク機構を一時的に外し、転移機能を搭載したのも彼の判断によるものであった。無論、“破壊の騎士”サンジュは難色を示したが、彼の知ったことではなかった。
「ただちにシュテルと合流し、ヘルヘイムへと帰還せよ。この前哨戦におけるお前達の役割はもう済んだ、決戦に備えやるべきことは山の如くある、休む暇などありはせんぞ」
“蟲毒の主”アルザングが転送魔法の術式を紡ぎ、三角形の陣がレヴィの周囲に顕現する。彼の本領は魔術師であり、直接戦闘よりもこちらの方が得意であった。
「あの……彼は?」
そして、転移魔法が完成するまでの僅かの間に、仰向けに倒れたままの少年を見据えつつ彼女は問うた。
「知らぬ、私は魔術師であり騎士の介錯を行う資格は持ち合わせていない」
アルザングの目的はレヴィをシュテルと合流させ、ヘルヘイムへ帰還させることにある。少年はその障害とは成り得ず、“未来の障害となる可能性”もない。“蟲毒の主”が騎士であれば介錯したかもしれないが、彼は魔術師であり無駄に魔力を消費することは本懐ではなかった。
そして何より、彼は黒き魔術の王を信奉している。この状態から少年に止めを刺すことは“勝利を盗む”に等しき愚行、騎士ならぬ者以外が少年に死を与えることは、あまりに醜悪な行為であった。
他者を顧みず、己の野心と欲望のままに突き進む者らにも理というものがある。むしろ、誰とも共有しないがために、己の理を守ろうとする姿勢は騎士のそれをすら上回るのかもしれない。
「………さよなら………………ありがとう」
転移魔法が完成する瞬間、青髪の少女は小声でそう呟き、空間を渡る光の中に溶けていった。その声には確かにこれまで彼女が持ちあわせいなかった感情が籠っていたことを、“蟲毒の主”は知るのか、それとも知らないのか。
その答えを示すこともなく、アルザング自身もまた転移魔法を用いこの場から離れた。向かう先は最大の激戦地であり、白の国を陥落させるならばこの前哨戦において何としても仕留めておかねばならない敵手が守る風の谷。
この戦いにおいて、司令官であるアルザングが標的と定めていたのは盾の騎士ローセス、予定通りならば目的は成就しているはずであったが、想定外の存在がそれを打ち崩しつつある。
乱された作戦を修正するべく、黒き魔術の王の片腕もまたこの場から姿を消す。この地にはもう、意味のある存在は何も残っていないのだ。
けれど―――
だが、心するがいい、受け継ぐものなき孤高なる魔術師よ。
騎士の魂は死せず、その剣に宿り続ける。自分のためにのみ魔術を極め、高みへ至ろうとするお前には、決して理解出来ぬ境地であろうが―――
決して騎士の魂を侮るなかれ、それがあるいは、お前の最期をもたらすこともあり得るのだから
今より50年以上過去、白の国の東に在り、良き風の吹くこの丘において。
旧きドルイド僧と、その弟子であった若き魔術師があり、そのような言葉が交わされたことを、風も大地も確かに覚えている。
意味のないものはない、決して、無価値ではないのだ。
少年はここで果て、その命は散りゆく、それは最早逃れられない定めではあるが―――
少年はまだ、生きている。生きている限りは、それは無価値ではあり得ない。
だから―――
「――――なんとも、満足そうな顔をしているな」
「――――騎士……シグナム」
もう何の機能も成せない筈の少年の身体は、剣の師である将に対し、確かに反応を返したのだ。
そして、彼女もまた理解している。少年はもう助からず、今言葉を返したことが既にあり得ぬことであることを。
「お前の騎士道は、守り通せたか?」
「………はい、確かに」
だからこそ、ここでは人間らしい気遣いの言葉や、別離の言葉は必要ない。二人は騎士であり、騎士とは人間とかけ離れた道理を貫く存在、戦場で果てた騎士に、余計な言葉など必要ない。
彼女が余分な言葉をかけず、騎士道の所在を問うことこそが、少年を騎士と認めている証であり―――
少年にとっては、何物にも代え難き名誉であり誉れであった。
「ならば、贈るものがある。姫君と、私と、ローセスと、シャマルの四人で考え、誰もが認めた名だ」
それは、無意味なる贈り物。あと一分もなく死にゆく者に、何を贈ろうと意味などない。
だが、騎士とはそういうものだ。条理に沿って動くならば、騎士など必要ないのだから。
「白光(ひかり)の騎士、夜天の守護騎士の一人であり、最も気高き刃に贈る称号だ。破邪の剣アスカロンを持ちて、異形なる者を無に帰す、輝ける白光」
「白光の騎士……」
異形の技術の集合体たる“破壊の騎士”を無に帰し、精神に歪みを抱えていた人道魔導師を討ち取り、純粋なる心を持った少女は、殺すことなく無力化した白光の騎士。
まさしく、リュッセという少年の在り方、その騎士道を表す称号であった。
「白の国の近衛騎士隊長、夜天の騎士が烈火の将、シグナムとその魂、炎の魔剣レヴァンティンがここに刻む。新たなる夜天の騎士、白光の騎士リュッセの誕生を」
それは、誰にも知られることなき騎士叙勲。
形式もなく、主君もおらず、師から弟子へと贈られた名誉の具現。
彼女は宣誓の言葉と共に、その魂たる炎の魔剣、レヴァンティンを水平に掲げ
「我が……魂……アスカロン……に……懸けて……」
少年は最後の命を燃やし、右手に持ちし剣を上へと掲げ―――
二つの剣が、交差する。
「「 我等、夜天の主の下に集いし雲 」」
紡がれる言葉は、滑らかに
「「 主ある限り、我らが魂尽きることなし 」」
死の淵にある少年の喉は、途切れることなく声を紡ぎ
「「 この身に命ある限り、我らは御身の下に在る 」」
その命が尽きるまでの、瞬きほどの僅かな時、宝石よりも麗しき輝きを放つ美麗刹那
「「 夜天の王にして我らが主、フィオナ・ヴァルクリントの名の下に 」」
少年は確かに――――自身が憧れた理想の具現、夜天の騎士の一人であった
それは、白光の騎士の物語
若木であった少年は騎士となり、守るべき国と主、そして友と未来のために全てを懸け
彼の騎士道は途切れることなく、最期は師たる烈火の将に見送られ、その生涯に幕を下ろした
されど、その魂は確かに―――
「今より私がお前の主だ、黒き魔術の王と彼が生み出す異形の軍勢を滅ぼすその時まで、異存はないな、アスカロン」
『Jawohl.』
その剣に宿り、受け継がれていく
△△△△
△△△△△△△△
△△△△ △△△△△
△△△△ △△△△△
△△△△ △△△△
△△△ △△△△
△△△ △△△
△△△ △△△
△△ △△△
△△ △△△
△△ △△△
△△ △△△
△△ △△△
△△ △△
△△ ヴァルクリント城 △△
△△ シグナム △△
△△ △△△
△△ △△△
△△△ △△△
△△△ △△△
△△△ △△△
△△△ △△△
△△△ ヴィータ △△△
△△△ フィオナ △△△△
△△△△ ザフィーラ △△△
△△△△ △△△
△△△△ △△△△
△△△△ △△△△
△△△△ △△△△
△△△△△ △△△△
△△△ △△△
クレス
ローセス
アルザング